レシート問答

コンビニのレシート入れが嫌いである。
理由は簡単でレシート未渡しによる後々のトラブル回避のためにお客にレシートを渡してあとはお客の責任で捨ててくれよ、店側はちゃんとレシート渡したからな! っていう店舗側の免罪符てきメンタリティがいやだから……などではもちろんなく、
http://chaosroute.g.hatena.ne.jp/./nekoprotocol/20070913/1189659350

かきかけ、と書かれてある文章を引き合いに出すのも申し訳ないのですけども、確かにレシートは免罪符てきメンタリティのもとに渡されていた。少なくとも私の働いていたCD屋では。
というのも、CDやレコードはわりとプレイヤーの状態に左右され飛んだりすることもあるので、返品交換が頻繁にあり、その際にレシートの提示を求めていたからだ。中古販売もやっていたから、レシートがないと新品と中古の区別がつかなかったりもするし、中古は盤の状態によって値段もまちまちなので、レシートがないと返品金額もわからない。

例えばこんなことがあった。お客さんがブラックビスケッツ(時代を感じますね)のシングルCDを持ってきて、こういった。

「これ、中身が違うんです」
(中身を確認して)「いえ、これであってますよ?」
「違うっていってるでしょ! かけてみなさいよここで。日本語じゃないから!」

覚えてる人がどんくらいいるのかよくわかんないんですけど、ブラックビスケッツは確かビビアン・スーが歌をうたっていて、台湾版も発売されてたんですよね。で、そっちを買っちゃったんだなってわかるんですけど、それを説明するも納得してもらえず。しかもその人はレシートを持っていない。おまけに新品では台湾版入荷していなかったのに、新品で買ったと言い張る。
とまあ、こんなやりとりも日常茶飯事だったりしたわけです。常連さんとかには、ある程度融通きかせたりもしてたけど、一応レシートないと受け付けません、てことにしとかないと、際限なく返品交換受け付けることになりかねない。

そしてある日、中古CDを買い、レシートをカウンターに放っていったお客さんの背中に向かって、私はいつものように「レシートはお持ち下さい」と声をかけた。すると、その習慣的な台詞にたいして「いらねえっつってんだろ」という返事がかえってきた。パンクっぽい服装で鋲付きのリストバンドした男の子だった。
当時、わりかし血の気の多かった私は、すぐにカッチーンときて、
「返品、交換できなくなりますけどよろしいですか?」 と言い返し、彼は彼で 「じゃあこれがあればいつでも返品できんだ?」 と詰め寄った。
「それなりの理由があればですけどね?」
「どーやって判断すんだよ」
ここで私は、うんまあ確かに。と思ってしまった。中古品については、いくら検盤してもらったところで、お客さんが「自宅のプレイヤーでかからない」と言うなら不良品になってしまう。それがほんとか嘘かなんて、お客さんを信じるしかないのだ……。
しばし見つめあう。そして彼は、こう言った。



「……返品するつもり、ねえからいいよ」

正直、ときめきの導火線に火がつきましたよ。
まあそんなで結局彼はレシートは受け取ってくれなかったんだけど、その後わたしもいろいろ考えて袋にいれるとか中古の場合ケースにいれちゃうとか、いろいろルールができたり消えたりしていって、最終的に残ったのはやはり「レシートがないと返品交換できなくなりますよ」と説明することだった。
もしかして、この先数年で電子マネーが普及して、ある程度の履歴が閲覧できるようになったりすれば、解決する問題なのかもしれない。
でも、ああいったやり取りがなくなるのは惜しいような…ってそんなこともないか。それはそれで快適でスムーズなお会計ライフだろう。そのときまで、お財布レシートでぱんぱんにしときます。
それにしても今思い返すと自分は店員として失格すぎますね。ごめんなさい。いまはだいぶ丸くなったと思うよ…。