町

金曜日は仕事ではじめておりる駅の、はじめて歩く町へ行った。大通り沿いは大きなマンションばかりだったけれど、一本道を入ればのどかな住宅街だし川は流れているしで、いいところだなと思う。その反面、もし自分がここに住むならと想像してみると、やはり自分が長年暮らしてきた町のつくりを前提に歩いてしまうところがあって、例えば駅前には商店街があり、道は細く入り組んでいて、車もすれ違うのに難儀するような路地を抜け大通りに出て商店街を抜ければまた駅がある、はずだ、と思って私は歩く。でも、当たり前だけど、大通り沿いに駅がある町もあれば、駅からはなれたところに商店街がある町もあり、だから、はじめていく場所で戸惑うのは、こうして駅と自分のいる場所の感覚が、よくわからないからなのかもしれない。そんなことを考えながら黙々と歩く。
最近は予想もしないところに大きな穴のような更地があったりもするけれど、そういえば以前「都市の模型展」を見たときに、上海、NYの風景と比べて、東京が「低い」のは地震がある国だからなんだなと納得したこと、そして大通りの周辺にのみ建つビル群が、まるで住宅街を囲う壁のように見えたことを思い出し、やはり私は、身を寄せあう民家と都市が近くにある東京の風景に愛着を感じているんであって、そのバランスがどんどん崩れていくのはやっぱりさみしいなと思う。それが「私の知っている風景」にこだわっているだけだとしても、工事現場の表に貼られた完成予想図を見てもわくわくするようなことはなくなってしまったし、例えば数十年後、そのビルもまた、自分の町の風景として近しい存在になっているだろうとはあまり想像できなくて不安になる。