ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

ichinics2008-06-30
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
久々のPTA新作をやっと見ました。
冒頭からしばらく続く、台詞のないシーンにぐいっと胸ぐらをつかまれたような気持ちになる。私はこれまでのPTA監督作品にかなり思い入れがあるのだけど、この映画については、それと比較して見る気にはならなかった。それは、あまりにも雰囲気が違うように感じたからなのだけど、それはこの映画で描かれるのが、「変化」ではなく、「変化しないこと」を描いた物語だからなのかもしれない。
とはいえ、この映画は、きっと見る人によってかなり感想の異なる映画だろうと思う。特に、物語の主人公であるダニエルをどう見るかで、印象はがらりと変わるだろう。
ダニエルは最初から最後まで変わらなかった。そういう映画だと私は思った。個人的な価値観で判断してしまえば、ひっかかる部分ももちろんあるのだけど、それでも、ダニエルという人のクロニクルはひたすら魅力的で、それはなぜだろうと考えてみると、それは彼が変わらないからなのだった。
私は人が変わっていく物語が好きだ。変化というより、なにかのスイッチが入るかのような、いつのまにか新しい場所に立っていることに気付くような、そんな物語がとても好きだ。
それとはまた別の気持ちで、ダニエルの「堅さ」には爽快感すら感じた。そして、その堅さがなんであるのかを、ひとつの「言葉」で言い表せないところが、この映画の面白さだとも思う。
それから、この映画は音楽*1もすばらしかった。音楽があることで、その画にいくつもの視点が生まれるような、映画ならではの音楽だったと思う。若干、音楽が語り過ぎる部分もあったとは思うけれど、とても印象に残った。映像も美しく、全ての色を混ぜ合わせた黒のような、贅沢な映画だったと思う。

*1:Radioheadのジョニー・グリーンウッドが担当