村上春樹と Radiohead について

村上春樹の新刊がでた。ずっとIQ84て思ってたけど、昨日やっと『1Q84』だって気づいた。『海辺のカフカ』以来7年ぶりの長編小説ということで、29日発売ってなってるけど、もう書店に並んでいて、なんと発売前に増刷が決まるほど予約が殺到したらしい。
私も村上春樹の小説は好きで読み続けているし、これから読む新刊もすごく楽しみなのだけど、でもそれは人におすすめしたい気持ちとはちょっと違うんだよなーとか考えていて、それは Radiohead を好きな気持ちに、ちょっと似ているのかもなと思った。

私は好きなものについて話すのが好きだし、好きなものについての話を聞くのもとても好きだ。
でも、村上春樹さんの小説も、Radiohead の音楽も、私にとって特別なものであることは確かなのだけど、果たしてどこがいいのかと考えてみても、いまいちよくわからないのだった。
洋楽を聴き始めた頃、歌詞の意味なんてさっぱりわからないのに、なんでこの曲が好きなんだろう…と思うことがたびたびあった。しばらくして、要するに音が好きなんだなという当たり前の結論に達するのだけど、歌詞の意味がわかればそこには色がつくし、歌詞があるからこそこの曲が好きだ、と思うこともやっぱりある。
そして、私にとって村上春樹Radiohead は、歌詞の意味の分からない音楽に、近いのだと思う。例えば「My Iron Lung」とかいまだに意味がわからない。今まで何度もライブで見てるくせに、改めて考えてやっと、たぶん肺だったはず、とかそのくらいだ。ただ、それが「マイアイアンラング」という音でしかなくても、あのイントロが流れれば文句なく気持ちは湧き立つ。一番好きな曲のひとつである「Killer Cars」でさえそんな感じだ。

村上春樹についてもそうで、そこに何が描かれているか、ということよりも、単に読んでいるのが楽しいから好きなのだと思う。特に一人称が「僕」だった頃の作品については、印象的なフレーズを思い起こすとき、頭に浮かんでいるのは物語よりも、そのフレーズを通して自分が思い描いた何かの方だ。それは共感ともまた違うので、やっぱりうまく説明することができないのだけど、
その何かが個人的な思い出になっているからこそ、私は村上春樹の小説がずっと好きできたんだと思う。

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4年前にも似たようなこと書いてた。4年前って。

http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20050928/p1