夜の公園/川上弘美

夜の公園 (中公文庫)

夜の公園 (中公文庫)

本屋さんに文庫が並んでいるのを見て、読んだことないなーと思って買った。川上さんの小説を読むのはちょっと久しぶりかもしれない。そして久しぶりだからかもしれないけど、なんだかずいぶん雰囲気が変わったなあと思った。
「夜の公園」は、夫と妻と妻の友人と妻の愛人の複数視点で描かれるお話。わりと感情の入り組んだお話だったせいか、読んでいる間中、身の置き所がないというか、結局誰にも感情移入出来ないまま読み終えてしまった。
ただ、主な主人公であるリリが言う「どうしてわたし、今ここにいるんだろう」という台詞はなんだか気持ちに残った。
どうして今ここにいるんだろう、と思うときにはきっと2種類あって、ひとつは単純に、なにか居心地の悪さを感じているとき。もうひとつは、なにがどうしてこうなった、という部分がぽかんと抜けて、今に放りだされたような気分なんじゃないだろうか。
読んでいると、たぶんリリとその友人であり夫の愛人でもある春名の関係こそが一番強いものだったのではないか、と思うのだけれど、それすら「今」の時点ではわからなくて、ただ今に放り出されているような物語だった。だからこそ、身の置き所がないと感じたのかもしれない。
それにしても、川上さんてこんな生々しい関係を描く人だったかなあと思う。