いつかの前に

12時半に待ち合わせした改札脇のハーゲンダッツはもうとっくになくなっていて、でも携帯電話があればそんなことまったく問題なく「ハーゲンダッツがあったあたりにいる」と送信して解決。レンガを並べたような歩道は隙間にヒールがひっかかるからやだ、でもあれって滑り止めなんでしょ、そうなの? なんてどうでもいい話をしつつ、映画のチケットを買い、お昼ご飯を食べた。
昼時の混雑した店内には、きれいな服をきた女性の集団(7,8人)と、カップル二組、ビデオカメラを片手に持った男性と関係のよくわからない女性数人のグループがいたけれど、彼らが話していることは聞こえてこない。あの音の散らばり方というのは、たぶん天井の高さとかそういうものに由来していて、私はやったこともないビリヤードを連想する。建物は三階建てて、窓から差し込んだ秋の白っぽい光が、食器にあたってまぶしかった。
「生まれ変わったらどんな仕事をしたい?」と友人がきくので、あれこれ考える。先の心配をせずに、まとまった休みがとれて…なんて条件の方が先に来てしまうのはなんとも夢が無いような気がするけれど、そもそも生まれ変わらないと違う仕事できないっていう前提がひどいね、という方向に話は移る。移りつつも、頭に思い描いたいつかの風景というのはちゃんとあったような気がする。

朝起きる。台所に窓があったらいいのにと思う。同じ階に並んだ部屋の中でも角部屋にだけは台所脇に窓があって、その中はどんな風になっているのかちょっと見てみたい。最近見たいくつかの映画でも、特に食事の場面ばかりが印象に残っているのは、食欲の秋ってやつなのだろうか。コーヒーを飲む。電気を消す。乗る電車まであと5分、というところで新しくできたビルの中に人が流れているのに気づき、追いかけてみると新しい喫茶店と改札があって少し嬉しくなる。
生まれ変わる前にもうちょっと、やりたいこともあるような気がする。