雨

友だちと近所の公園へでかけた。園内にある売店でビールを買い、飲みながらゆっくりと歩く。混雑した通りを抜けて、小さな川を渡り、ようやくあいているベンチを見つける。遠くからバイオリンの音が聞こえ、それに合わせてオルガンを弾きはじめるひとがいた。子どもがブランコをこいでいるのを見ながら、友だちは「こないだブランコやってみようと思って座ったら、おしりが入らなかったよ」と言って笑った。
お互いに、近頃めんどうだなと思うことを言い合い「だいたいのことはだいたいでいいよね」と結論する。そのめんどくささは自分たちが感じているだけ、というのはわかっているのだけど、それでもお互いの荷物を広げて整理していくのは、旅行の前日みたいに楽しい。

何年か前だったら、しばらく落ち込んだだろうなということがあって、それなのになんだかぽかんとしてしまうだけで、感想が浮かんでこない。
落ち込んでみようと思えばできるような気もするけれど、頭がそちらを見ようとしない。足がつったかなと思ったらつってませんでした、みたいな安心感もあるんだけど、どこか気持ち悪い。
しばらくそんなことを考えていたのだけど、
つまり、これはもう自分にとって、思い切り泣いたり笑ったりするようなことではなくなってしまったんだな、と気づいてやっと、腑に落ちたように感じた。それはなんだかさみしいことのような気もするけれど、
ひとが変わるっていうのは、考え方が変わるんじゃなく、そのとき考えていることが変わるということなのかもしれない。

少し前には半そででも暑いと言っていたのに、近頃雨続きでまた少し寒い。
雨の降りはじめって、ほうれん草のにおいだよねと言ったら、全然わかんないといって笑った友だちの声を思い出しながら、いま話ができたらいいのになと思った。