ならずものがやってくる

タイトルがいいなと思ったのと、いつだったか美容院で渡された雑誌に載っていた書評を読んで気になって買った本。タイトルからついヤァ!ヤァ!ヤァ! とならず者が群れをなしてやってくる感じの話を想像していたのですが全然違いました。

ならずものがやってくる

ならずものがやってくる

1枚のレコードのように曲目を全て通して聞いて初めて、アルバムの全体像が見える…という構成になっている。1つ1つの短編が重なり合い、記憶が様々な時間軸にマッピングされていく感覚は、本の厚み以上の長い、その間にある「時間」を思わせるものでした。1話ごとに文体も違い、だからレコードを聴く時のように、お気に入りの曲といまいちピンとこない曲があったりもする。でも読み返したらまた印象が変わるだろう、と思える本でした。
最も気に入ったのはB面2曲目の「将軍を売り込む」。この本の中では一番中心から外れた話かもしれない。ビートルズだったらオブラディオブラダみたいな、差し色みたいな曲なんじゃないかと思う。あと自分はドラッグ絡みの話は好きじゃないんだなーと思ったりもした。
文体で最も印象に残ったのは、やはり最後から2つ目のパワーポイントで描かれた話。こんな形で小説が描かれるというのはもちろん初めて見たし、それでいてまったく読みにくいということがないのが不思議だった。この短編については著者HPでも読めるみたいです→http://jenniferegan.com/
個人的に惜しいと思うのは、名前だけでは覚えきれない部分もあったせいか、読みながらあちこち読み返したりもしていて、読むテンポが悪くなってしまったこと。最初は気にせず一気に読んでしまえばよかったなと思いました。