変身ものがたり/渡辺ペコ

へんしんものがたり (秋田レディースコミックスデラックス)

へんしんものがたり (秋田レディースコミックスデラックス)

帯に書かれた “現代のおとぎ話" というコピーがしっくりくる短編集だった。巻末に川上弘美さんとの対談が収録されているのも腑に落ちる。『ラウンダバウト』(id:ichinics:20071101:p1)でわたしは渡辺ペコさんの漫画おもしろいなって再発見した気分だったけど、そもそもは『東京膜』のひとだったんだよなーって改めて思いだしたりもした。この漫画家さんの色がどっちにあるのかはまだいまひとつわからない。個人的にはコメディを描いてるときのほうが好みではあるんだけど、それはそれでこの短編集も面白かったです。
現代版人魚姫や、現代版狼男、文字になってしまった人の話なども面白かったけれど、とくに印象に残ったのは、「毒りんごパイ」というお話。
整形を繰り返す「うつくしい」母親を持つ娘が、久しぶりに母親に会う場面を描いた短編で、娘は母親のことを「醜形恐怖ってやつだよね」と称している。自分の容姿との付き合い方を描いた話ってたぶんたくさんあると思うんだけど、この場合、娘が母親に対して抱いているコンプレックスはそのまま自身にかえってきていて、それがすごくせつない。んだけど、たったひとりに肯定されればそれでいいんだよなあっていうのがすごく少女漫画でよかった。