「死のロングウォーク」/スティーブン・キング

初めてスティーブン・キングの作品を読みました。というと自分でもちょっと意外な気がするのだけど、スティーブン・キングの名前を知ったのは映画が先で、子どもの頃から、映画の人、というイメージだったのがその理由かもなぁと思う。
読み終えてあとがきをみると、これはもともとリチャード・バックマンというペンネームで発表された作品みたいだ。
なんで私が初めてのスティーブン・キングにこれを読むことにしたのかというと、人にお勧めしてもらったからなんだけど、これはこれでまた、後味の悪い作品だった。もちろん褒めてる。
物語は「ロングウォーク」という競技を描いたものだ。アメリカ全土から選抜された100人の少年が、コース上をただ歩きつづけるという競技。歩行速度が落ちたり、立ち止まったりすると警告を受け、3回目の警告を受けると射殺される。そして最後の一人が残るまでゴールもなく歩き続ける、文字どおりの「死のロングウォーク」。
物語の冒頭では、競技のルールなど詳しく描かれていないため、最初の銃撃があって初めて、彼等はそれが冗談ではないことを知る。そして読者である私も、ではなぜ彼らは参加するのか、そして、この国ではそんな競技が許されているのだろう、ということを考えはじめる。その答えが知りたくて、ページをめくるのだけど、ロングウォークは終わらない。最後の一人になるまで、終わらないんだということだけがずっしりと立ち上がってくる。
少年たちは互いに励ましあい、時には相手が先に死んでくれればいいのにと思い、それを恐れ、また友人に隣にいてほしいと願う。
そしてページを捲る私も、銃の音が主人公の命が少しのびることを意味するように感じ、次は誰が、ということを考えはじめている。なぜこんなゲームが行われるんだ、という疑問はだんだんと遠ざかり、歩き続けることによって、かろうじてつなぎ止められる時間と、その先にある死ばかりが目前に広がる。
はやく終わってほしい、と思うことの意味をあらためて考える。やりきれない話だけれど、登場人物がとても印象的な作品でもあった。