イン・ザ・プール/奥田英朗

イン・ザ・プール

イン・ザ・プール

奥田英朗さんの作品はいつも安心して読める。
初めて読んだのが『最悪』(←本のタイトルです、念のため)だったので、ミステリとかサスペンス系の小説家という印象があったのだけど、その後『マドンナ』やこの作品を読むうちに、その作風の幅広さを知った。作風の広さという点では重松清さんや東野圭吾さんに近いものがあるかもしれないけれど、奥田英朗さんの作品の方が、なんというか乾いている感じ。作者の匂いを感じさせることなく、作品1つ1つがくっきり立っているという印象がある。新刊が出たら即買う! という訳ではないけど、いつも「うまいなあ」と思わせてくれる作家だ。
そしてこの「イン・ザ・プール」はニルヴァーナの「ネバーマインド」のような表紙が気になってはいたんだけどなかなか手に取らずにいたものを、今日やっと読了した。

イン・ザ・プール」には、精神科医伊良部とその患者が主人公の短編が五本収録されている。この伊良部のキャラクターが絶妙で、その患者達とのやりとりも面白い。先日、映画館で映画版「イン・ザ・プール」の予告を見ていたので、伊良部には松尾スズキさんを当てはめて読みはじめた。違和感はまったくなく、ぴったりはまるキャスティングだと思います。
あらすじとしては、それぞれ真剣に悩んでいる患者達が、適当で自分勝手な伊良部の態度にやきもきしながらも、結果的に快方へ向かうという話。実際に自分の担当医だったら私も不安になると思うけれど、物語にでてくる患者達同様、私も伊良部みたいに生活できたら楽だろうなと思ってしまった。「まあいいじゃん」って思えば良いじゃん、というスタンスが魅力的。続編の「空中ブランコ」も読みたくなりました。でも、昨日の映画のこともあるので次は「ハサミ男」。

↓映画版オフィシャルサイトはまだ製作中みたいなんでヘラルドの紹介ページ↓
http://www.herald.co.jp/official/pool/index.shtml