「姑獲鳥の夏」

ichinics2005-07-10

7/16公開予定。
試写会にて。公開前なので書こうか迷ったけど、良かったのでネタばれはしないように気をつけて書いてみます。が、この作品を見に行く方の中でどの位の割り合いが未読の人なんだろう? そして未読の人はこの落ちをどう思うんだろうっていうのはちょっと気になっていて、今日ちらほら聞こえて来た会話の中では、カップルの女の子の方が彼氏を質問攻めにしてるのが印象に残りました。あとコアな京極堂ファンらしき人が多かったのも新鮮だった。ちなみに私は京極堂シリーズは5作目くらいまでしか読んでないのでファンは名乗れません。読む気はあるんだけど、ちょっと、心構えがいるので後回しにしがちなんだ。

全体的な感想

本を読んでいる時に見えている映像っていうのは読む人それぞれ違うだろうと思う。想像の中の風景って言うのは、とりあえず私の中では今までに見たあらゆる記憶の中から、引っ張りだされてくる映像のコラージュのようなもので、それは決して人に見せることができないものだ。
ページをめくって、主人公が部屋に足を踏み入れるシーンが描かれる。その時点で私の頭の中には既に部屋が存在している。ドアはどんな感じか、部屋の中には何があるのか。作者の文章とともに私は室内を見回してゆくことになるのだけど、もちろん文章では語られない、死角となっている部分もある。しかし、そういう部分についても、脳内ではちゃんと存在しているわけで、だから、現実で「この景色みたことあるな」と思ったりするのが実は、そうやって本の中で経験した場所だったりすることもある。しかしそういうことを他人に説明するのはやっぱり難しい。
でも、この映画はそれを体現していた。姑獲鳥の夏」を読んだのはかなり前のことなのにも関わらず、映画とともに鮮明に浮かび上がってくる記憶と、ほとんど同じといっていいくらいの風景が次々に現れるんだよ。びっくりした。それは京極夏彦さんの文章の力なのか、幼い頃から意識はせずに実相寺昭雄監督の作った作品を見てたからなのかどっちなのかはわからないし両方かもしれない。
でも、とにかく、ここにあるのは私が想像してた風景そのまんまに思える。すごい!!と思った。興奮した。
他の人はどうなんだろう。公開してからいろんな人の感想読むのが楽しみだ。
それから、脚本について。あの重厚な作品をとても上手くまとめてあったと思います。原作ものの映画って、どうしても端折ってる部分が気になってしまったりするんだけど、この映画では、それがなかった。まあそれは私の記憶が薄れてるからかもしれませんが。見せ場となるポイントを押さえた上で、原作読んでない人にもわかりやすく(?)作られた脚本のように感じました。正直なところ、初めて原作を読んだ時には「なんだこの結末は!」と思ってしまったんだけど、映像で見せられると「そうか」と腑に落ちてしまう。
ともかく。京極堂シリーズが好きな人は、キャストに違和感があっても見てみて損はない映画だと思います。私はもう一回見たい。

以下、キャスティングについて。

キャスティング

まずこの作品が映画化されるっていうことで1番話題になっているのはキャスティングなんじゃないかと思います。私もいろいろ想像してたりしたので、最初にキャストを聴いたときには結構違和感があった。でも、実際に映画で見てみると、意外なほど違和感はなかったです。原作のイメージと異なる部分も多いけれど、「原作のイメージ」をちゃんと残したキャラクターがそれぞれの役者さんにしっくり馴染んでいる気がした。特に印象に残ったのは京極堂、榎木津、木場(というか私が好きなキャラクター順ですが)。
まず、堤真一さんの京極堂は、最初ちょっと早口すぎて台詞が聞き取りにくかったけれど、だんだん味がでてきて良かった。私個人の京極堂像とは違っていたけれど、堤さんの京極堂、としてちゃんと成り立ってて好印象。ちょっと場内から笑い声(映画中ではなく、エンドロールの後です)も起こったりしましたが、あくまでも暖かい感じの笑いで、割と受け入れられてるっぽく感じました。
阿部寛さんの榎木津も良かった。かっこいい。けど、あんまり見せ場がなくて残念。しかし何を着ても似合う人だ。ポスターは榎木津&木場のバージョンが一番好きだ。
宮迫博之さんas木場も良い感じでした。ただ、木場って無骨な大男という設定でイメージしてるので、なんか違うんだよなという印象は否めない。あんまり出番もなかったし…。今回の作品では良かったけど、これが「魍魎の匣」だったらと思うと、かなりイメージ違う気がする。
関係ないけど、関口君の服がなんだかへんだったのが気になった。なんだかやけにワイドパンツでジャケットも短い…。
京極夏彦さんもちゃんと出演してました。
映画化って話を聞いたばかりの頃の日記(http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20050311/p1)にはキャストについていろいろ書いてしまったけど、思ってたよりずっとよかった。