グッバイ、レーニン!

監督:ヴォルフガング・ベッカー

グッバイ、レーニン! [DVD]

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父が西側へ亡命してしまったまだ幼い頃から、主人公、アレックスは、母、姉と3人で暮らしてきた。母は社会主義社だったが、ある日、アレックスが反社会主義デモに参加し、逮捕されようとしているのを目撃したことで、心臓発作をおこしてしまう。そして、それから8ケ月、母は眠り続ける。その間にベルリンの壁は崩壊し、東西ドイツは統一へと向かい、社会は目まぐるしく変化していた。アレックスは奇跡的に目を覚ました母にショックをあたえないよう、周囲を東ドイツのまま保つことに奔走する。

変化していく社会と、身近にいる人々との関わりが少しづつ重なり、焦点をあわせていく様が丁寧に描かれた、とてもいい映画だったと思います。
アレックスの彼女、ララ(とてもかわいい女優さん)が何度も「お母さんに本当のことを言うべきよ」とさとすように、私も最初は「嘘」をつき続けることは、よくないことなんじゃないかっていう目て物語をおっていた。でもこれは、きっとアレックスも「いいこと」だと思ってやっているというよりは、途中からはほとんど自分のためなのだろうなと思う。
社会が変化する、ということを私はゆるやかにしか感じたことがないのだけど、東西ドイツ統一時の東ドイツに暮らしていた人たちにとって、映画に描かれる八か月はきっと目まぐるしいものであっただろう。特にお年寄りには辛い出来事でもあっただろうことが、物語の端々から感じられる。
でも母を助けるという名目で、少しずつ漏れてくる「今」を隠すために奔走する日々は、やがてもうひとつの「統一」を描き出すことにかわっていく。それは彼にとって、現実を受け入れるステップでもあったのだろう。
レーニンが、ゆっくりと手を差し伸べていた。あの場面*1
の美しさのように、かつて自分たちの国だったそこを、かれらも眩しい気持ちで見送ったのかも、しれない。
映画の中に、花火があがる場面がいくつかあるのだけど、その瞬間に、人の視界とともに気持ちまでよりそう感じがぐっと伝わってくるように思った。
幼い頃に好きだった「宇宙飛行士」を縦軸に、物語がきれいに包まれるところもとてもいい。

*1:どこかでみたことあるけど、思い出せない