感謝(驚)

商店街を歩いていた。23時すぎ。ほとんどの店は閉店してしばらくたっていて、少し先の角、ガラッと開いた扉から漏れた人の気配も、サアーって足元に沈む。発砲スチロールの箱がパコンて音たてる。私の膝がビニール袋をけとばす。指先がちぎれそうに寒い。ポケットに手を突っ込んで、ふと、半分しまったシャッターから、足の裏が、のぞいているのを見つける。組んだ足の向きから、その人はこちらに背を向けているのがわかる。その視線の先に、テレビの気配を感じる。
ふと、習慣という言葉が浮かび、つまり私は、その足の裏の持ち主の、習慣を見たような気がした。そんで、なんかこう、長いものについて考える。出来事が習慣になるまでの、長い時間のこととか、生活についてとか。
そして、商店街を歩く私も、やはり習慣の中にいるように見えるのだろーかと思う。
きっと、見えるのだろう。私がここを歩くことを、どう感じているのかは余所に。
朝、ボッと音をたててつくストーブの前に座り込んで、あの日見た足の裏の、その向こうにあったストーブのこと思い出す。繰り返すことっていうのはまるで立ち止まることのようだけど、でもそれはやはり断面で、それまでにあった時間が言葉にまとめられないことと同じように、明日どーなるかわからないってのは一緒なんだなとか思う。いつも。