「失恋ショコラティエ」他/水城せとな

失恋ショコラティエ 1 (フラワーコミックスアルファ)

失恋ショコラティエ 1 (フラワーコミックスアルファ)

ちょっと前にtwitterのTLで話題になってたので気になって読みました。
チョコレートが好きな女の子に失恋したことをきっかけに、ショコラティエを目指してフランスへ渡り、帰国してチョコレート店を開く、までが1話。で、その後は自分をふった女の子を振り向かせようとチョコレートを作るお話です。
けど、その情熱の傾け方は完全に駆け引きメインで、デートの誘いをいったん断ってから、電話してOKしたり、とか、でもその相手にだんながいるのはいいのか…とか…いろいろややこしいです。
主人公がショコラティエとして成長していく部分は面白いのだけど、個人的には主人公の思考と行動のギャップが苦手だなーと思ってしまったので、そこが楽しめるかどうかで好き嫌いがわかれる作品かもしれないなあと思います。

…なんて感想を友だちに話したら、それならって貸してくれたのが「窮鼠はチーズの夢を見る」と「俎上の鯉は二度跳ねる」というシリーズでした。これがねーとても面白かった。
妻が浮気調査を依頼したことをきっかけに大学の後輩と再会したことで、彼が自分を好きだったことを知る、という、BLといっていい作品だと思いますが、流されやすい主人公と、ずるがしこいように見えて自分に自信のない後輩の、思惑と本音が入り乱れる感じがとても面白かったです。
このシリーズの主人公は、自分は同性愛者ではない、ということと、自分を好きだという彼に対して感じる気持ちとの間で常に自問している。優柔不断なためなかなか結論がでないながらも、最後にちゃんと答えを見つけるところまで、とても腑に落ちる展開でした。
なんで俺なんだ、的なことを言う主人公に

見た目が綺麗で人間ができてて自分にいい思いさせてくれるような
そんな完璧な人をみんな探してると思ってるんですか?
あなたはそういう相手しか好きになれないんですか?

っていうシーンがよかったです。ぐっときた。

窮鼠はチーズの夢を見る (フラワーコミックスα)

窮鼠はチーズの夢を見る (フラワーコミックスα)

これを読んでやっと「失恋ショコラティエ」の面白さがわかったような気がしたし、そもそも水城せとなさんは「駆け引き」を描くのがうまいひとなんだなーと思った。ただそれは、こういう「表向きには秘密にしている」ことがある設定のほうがより生きる(自分は読みやすい)のかもしれない。