「鉄道少女漫画」/中村明日美子

鉄道少女漫画

鉄道少女漫画

小田急線を舞台にしたオムニバス漫画。とてもよかったです。
舞台になる駅は入生田、厚木、片瀬江ノ島、それからロマンスカーの話などもあります。私は生まれ育ったのが小田急沿線の町なので、小田急線にはそれなりに思い入れがあり、入生田以外は降りたこともある駅だし、見慣れた車内だしホームだし、なのでよけいに面白く読めたのですが、この本はあくまでも舞台が小田急線の、しいて言えば少女漫画で、小田急線を知らないひとでももちろん面白く読める作品だと思います。
例えば毎朝、電車に乗り合わせる人たちひとりひとりに物語があって、笑ったり泣いたり時には怒ったりもして、家に帰ってまた翌朝も同じ車両に乗ったりする。ここに描かれているのは、そんな繰り替えしの中に時折現れる分岐点のお話だと思います。

特に気に入ったのは、片瀬江ノ島を舞台にした「夜を重ねる」でした。あーでも入生田もよかった。
ずーーっと前、朝まで飲んだ帰りに電車乗ったら、つい眠ってしまい終点の片瀬江ノ島まで行ってしまって、次に起きたら新宿で(最速でも1時間以上かかる)、また引き返して駅員さんに「眠ってしまって」とか説明した朝のこととか、終電逃して歩いてみたものの力尽きて駅のホームで始発まで話してたときのこととか、学校早退して帰る日の、光に溢れた真昼の電車のこととか、あれこれ思い出して、あらためて、自分は小田急線が好きだなあ、と思った。そういう意味では私にとってまさしく「鉄道少女漫画」でした。楽しかった。