「髑髏城の七人 Season月 上弦の月」感想まとめ

ついに2月がきてしまいました。
2月は初志貫徹で下弦に捧げると決めたため(&有休が足りなくなりそうなため…)、多分上弦にはもう行くことができません…。なので下弦の自分内最終回を見る前に、私が見た限りの上弦の感想をまとめておきたいと思います。(って書いていたら友人がチケットを当ててくれて下弦の千秋楽に行けることになりました……圧倒的感謝……)
私が見た上弦は12/19ソワレ、1/7マチネ、1/26公演、の3回です。
TLを見ていると上弦については公演のたびに様々な感想が入り乱れており、どれが本来の上弦の姿なのかはよくわかりません。でもその定まらなさこそが上弦なのかもしれない、ということで私が見た3回を通しての印象を書いておこうと思います。円盤が出た時に読み返せるように…。

天魔王

私の上弦における推し、瞳の中のセンターは早乙女天魔王です。
早乙女さんの天魔王を見ると、毎回意識が奪われすぎるというか、気になってしまってついつい視線というか双眼鏡が向いてしまう求心力がある。これが人の男の力……怖いです。
チャーミングで、冷酷で、わがままでさびしがり。そういうイメージが入れ替わり立ち替わり現れるのだけど、言葉で定義しようとしてもするりと形を変える、玉虫色の天魔王だな、と思う。
12/19に見た時は扇子遣いがとてもうまくて、顔隠したまま何を見ているのか気になって、その扇子の向こうを双眼鏡で見ようとしているこちらが覗かれている…みたいな怖さがありました。
私、早乙女さんの舞台を生で見るのはこれが初めてなんですけど先日初めてゲキシネで「ワカドクロ」を見たら発声がぜんっぜん違ってて驚いたんですよね。この声の使い方も巧みで、
2幕の蘭兵衛との対決シーンで「お前のことだけを」っていうところで急に素の声に戻る(1/26が特に印象的だった)のが怖くて怖くてでも愛しくて仕方ないって感じでした…。
私は、手に入らないなら全て壊してしまえ、という意図で天魔王は蘭兵衛を呼び寄せたのかなと思っています。
本当はエゲレスのことなんかもどうでもよくて、全部ぐちゃぐちゃに壊してみたかった。自分が天にそうされたようにーー(私の妄想です)。
その狂った部分をきっと殿には見透かされていて、六天斬りで怖がって見せるのも、命に執着しているというよりは、もしかして、殿に罰を与えられることを待ってたりするんじゃないですか…と思った(完全なる妄想です)。
私の見た天魔王はそういう天魔王だった気がするけど、きっと「お前にはわからんよ」って言われる気がします。

捨之介

下弦の捨之介は、お調子者で懐が深く、しかし一人で諸々背負いこもうとする、少年漫画やニチアサ特撮ヒーロー像に近い捨だと思います。
だからこそ、上弦の捨之介を見た時には驚いた。
何となく浮世離れしているというか、ここではないどこかにいるようなイメージが上弦捨之介にはある。上弦が太陽なら下弦は月のようだなと思う。
線が細くて美しくて、なのに無界に向かう場面での女性慣れしてない感じ…!(下弦捨はここすごく楽しそうなので余計に対比が気になる)
誰にも腹を割ってない感じのまま後半に差し掛かり、六天斬りの場面は、追い詰めている側のはずなのに、なぜかガラス細工にひびが入ってしまったみたいな取り返しのつかなさを感じました。
だって宮野捨を見慣れつつある目には細いんですよすごく! そして佇まいからして、どこか儚い。ただ、その儚さの理由が、正直なところ、私にはよくわからないんですよね…。
いろんな方のレポを読んでいると、私が見た3回とはイメージがかなり違うな、と驚くこともあるので、上弦の捨之介については円盤でもう一度ゆっくり振り返りたいなと思っています。

蘭兵衛

下弦蘭に取り憑かれているため、上弦でも蘭兵衛をついつい見てしまうのですが、上弦蘭ね、ほんと下弦蘭とは別の生き物です。
「いい調子だなぁ髑髏党」っていうあの登場第一声からして「よっまってました」って声かけたいくらいの男っぷり。現代だったら天気のいい日は屋上で昼寝するタイプですよね。女にはもてるけど実は奥手。そんな感じの硬派なヤンキー蘭兵衛さん。
そんな彼が、天魔王に名前を呼ばれただけで、数珠を握りしめ心ここに在らずになってしまう、そのギャップが上弦蘭の魅力かなと思います。
1/7マチネの印象では、「殿の夢を」で完全に堕ちる印象だった。なので、何となく上弦蘭は殿はもちろんのこと、殿の野心とともに戦場を駆けるということそのものに取り憑かれてるのかなと感じました。
なのであの「楽しいなぁ」も「やはり自分は外道であった」という「諦念」の声に聞こえた。
では、なぜ天魔王は蘭兵衛を引き込もうとしたのか?
下弦天は「森蘭丸」が天になるために不可欠なパーツだったと思ってそうなんだけど、上弦天にとっての天はやはり「殿」だと思うんですよね。
だから「殿に成り代わって、殿の愛したお前を(もしくはお前たちを)めちゃくちゃにしてやる」という思惑だったのだとしたら、怖すぎるなと思いました。
三浦さんは目が大きいので、2幕ではあのらんらんと光る目の印象が残ります。あの目を閉じた先で、彼は殿に会えたのでしょうか…。

兵庫

個人的に、上弦のもう一人の主人公は兵庫なんじゃないかという気がしています。下弦は捨之介が兵庫たちの側にいるんだけど、上弦の捨之介は両者の間で揺れている存在に見えるから、かもしれない。
そして須賀さんの兵庫、引力がすごいんですよね、下弦でいう宮野さんと同じ、太陽みたいなタイプ。
2幕、天魔王と蘭兵衛が無界を去った後、下弦はむしろ「狸穴」のシーンという印象なんです。そこから、各自の決意を述べるシーンへと移行する。
けれど上弦の場合、ここから「雑魚だと思ってる連中の力」と宣言するまでずっと兵庫のターンに感じるんですよね。
上弦の兵庫について、最初は正直「太夫と付き合うようには見えないな…」なんて思ったりもしたんです。でも、だからこそ、この場面で2人の関係性が変わるのがよく見える。
仲間とわいわいやりながら、極楽太夫に憧れて追いかけ回して、でもそれはずっと一方的な関係だった。けれど、あの場面で、あの2人は初めて個人として支え合う関係になる。
そこからの、ラストシーンですよ。ラストのセリフが下弦と違うのもとてもいい。背伸びをしてきた兵庫だからこそのセリフで、そんなふうに「兵庫」の成長物語としても見れる。
下弦の場合、割と最初から兵庫と太夫はお似合いに見えるし、蘭兵衛が兵庫に向かって太夫を押し出したりもするので、まんざらでもない2人なんですよね。ラストシーンもどちらかというと「太夫が兵庫に支えられる」場面に見える。それから、襲撃後の場面も、間に「狸穴のシーン」が入ることでその後の「みんなの決意」へのワンクッションができている。
だから下弦では、兵庫は「成長するキャラクター」というわけではないんですよね。成長するのは霧丸に任せている感じ。
これはどちらが良いとかではなくて、強いて言えば下弦はそのように「役割分担があることでメインのストーリーがわかりやすい」のが魅力で、上弦は「日によって印象が変わる複雑なバランス」が魅力であることの、一因なんだと思います。

アイドルグループに例えると、明るくてちょっとドジで、でもガッツのある子がセンターのパターンが下弦で、影があるけど放っておけない、目を惹く子がセンターのパターンが上弦って感じ……。(あくまでも役のイメージの話です)
上弦の月下弦の月は、そんな風にチームのあり方からして異なっているのがめちゃくちゃ面白いな、と思っています。

余談ですが、そんなわかりやすさが魅力でもある下弦の月になんでこんなどハマりしているかというと、推しがでているのはもちろん、そのわかりやすさの中にも変化する部分はちゃんとあって、特に天魔王と蘭兵衛について解釈(というか深読み)のしがいがあるからかな…と思います。
下弦天、前まで殿よりも天という力を求めてた印象だったのに2/3あたりから殿への思いを滲ませてきたし、蘭のサービスもとどまることを知らないしでどうなってしまうのでしょうか。次の登城は14日です。月が沈むのが怖い。