夢見が悪かったせいでつい二度寝をしてしまい、飛び起きたのは8時近く、「ごめんごめん」と声をかけるとおやすみカバーの向こうから「ピッ」と抗議の声が上がった。
早速ミロ(「オトナの甘さ」というやつを最近朝飲んでいる)を飲みながらの放鳥タイムに入るが、まだなんとなくだるくて、ケージの餌や水を取り替えたところで帰宅してもらい、もう一度布団に潜る。
原因はわかっている。「病院で悪い報告を受ける」という夢をみたのだ。夢なのに、夢の中で凹んだ気持ちだけが残っている。退院してすでに3か月ほど経つがこういう夢を見たのは今朝が初めてで、きっと脳が整理を始めたということなのだろうな、と理解することはできるのに。
夢のことを頭から追い出すために、みくのしんさんのメロス記事*1をきっかけに最近見まくっているオモコロチャンネルの動画を、布団に潜ったまま1本見る。声を出して笑ってスッキリして、もう一度活動を開始する。
今日は外でランチを食べてから15時頃の映画を見るつもりなので、13時頃に出ればいいか、と算段をつけ、お茶を入れてベランダに出る。
「チェンソーマン」4話アキ君朝のルーティン回をみてからたまに、ベランダで本を読んでいる。狭いベランダで踏み台に腰掛けているだけなのではたから見たら不審者に近いが、少しでも日光を浴びることでセロトニンを補えれば御の字だ。
外が生ぬるくなってきたので、念の為、傘を持って外出する。
今日行こうと思っている店「R」には、ちょっとした、私だけの因縁がある。
まず一つは、はてなダイアリー時代からずっと(一方的に)日記を読んでいる方の行きつけのお店で、越してきてすぐに行こうとしたのだけど、コロナ禍ということもあり、なかなか営業しているタイミングに出くわせずにいたということ。
もう一つが、コロナ禍に入って母が高校時代の同級生とバンドを始めたことだ。
その同級生が私の住む街に住んでいるということで(母の地元が近いのだ)ちょくちょく家に立ち寄ってくれるようになった。聞けば、同級生は喫茶店をやっており、そこで練習しているのだという。
「良い店だから行ってみてよ」
そこで教えてもらった店の名前が、まさに「R」だったのだ。そして幾度かの営業休止を経て先週、営業再開のお知らせが母より入ったため、今度こそと訪れたのである。
念願のRは母から聞いていた通り、居心地の良いお店で、あの人のダイアリーで読んでいた通り、生姜焼き定食とコーヒーが美味しかった。
帰り際に母がいつもお世話になっていますと挨拶すると「いつも楽しく練習してます」とにこやかに挨拶され、楽しそうでいいなあ! という気持ちで店を後にした。ダイアリーのあの人が引っ越してしまってもうこの街にいないことは知っている。母の同級生はそれを知っているのか、聞いてみたいような気もしたけれど、はてなIDしか知らない方なので、尋ねる術はないのだった。
ちょうどよくお腹がいっぱいになって良い気持ちのまま、書店に寄ってから映画館へと向かう。
今日見るのは「すずめの戸締り」だ。
たぶんこういう話なんだろう、とある程度覚悟して行ったのだけれど、思っていた扱い方とは少し違っていた。どちらかというと良い方向に期待が裏切られた感じだった。起こったことはかわらない。その設定に「現実」をどうこうする力はないのだ。ただ、あくまでも主人公が旅を通して、あのセリフ*2を言える場所にたどり着いたという点に労りを感じた。
何よりも、まず主人公が高校生になっている、ということが個人的にはいちばんぐっとくるポイントだった。
余韻に浸りながら駅に向かったところ、事故で電車が止まっていた。
再開まで1時間程度かかるとのことだったので、バスに乗ることにする。私がバス停についたときは3人程度しか並んでいなかったが、おそらく同じ理由で人が集まったのだろう、出発する頃には車内は満員だった。
鎌倉殿までに晩御飯を済ませたいけれど…なんて考えながら乗っていると、背後でガクンと揺れる気配がした。
振り返ると具合が悪そうな人がいて、慌てて席をゆずる。横にいた人が運転手さんに「具合が悪い人がいます」と声を掛ける。空気がこもっているからと窓をあける人、水を飲ませる(その人が持っていた水だ)人、運転手さんは気を利かせて降車ドアをあけてくれるが、次で降りる予定だから、と意識のはっきりしてきたその人が言い、みな口々に「あともう少しですからね」と声をかける。
なんとなく団結したような車内で、こんな風に、見ず知らずの人たちと言葉をかわしたのはコロナ禍になってはじめてかもしれないな、と思った。
その人が下車し、走り出した車内で「ちゃんと歩いてる、よかった」と誰かが言った。
終点の駅前で乗り合わせた人たちが散り散りになった後も、その「よかった」が湯気のようにあたりを漂っているような気がした。
*1:https://omocoro.jp/bros/kiji/366606/
*2:「行ってきます」