読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

 〈小市民〉シリーズ春夏秋/米澤穂信

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

アニメ版の『氷菓』がとても面白かったという話をしていたらおすすめしてもらったので読みました。面白かった!
春夏秋というのは「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定鳥ピカルパフェ事件」「秋期限定栗きんとん事件」の3作品のことで、小鳩君と小佐内さんという〈小市民〉を目指す高校生を主人公とした学園(?)ミステリーシリーズです。
小鳩君と小佐内さんが2人そろって〈小市民〉という高校デビューを目指すのには理由があって、小鳩君のそれは1巻である春期の序章で「本当にお見事。鮮やかな推理。綺麗な証明。でも、その、まあ、なんていうか、言いづらいんだけど、はっきり言わせてもらうとさ。  きみ、ちょっと鬱陶しいんだよね」という言葉を浴びせられる悪夢を見ていることでもなんとなくわかる。しかし甘いものをこよなく愛し何よりも優先する小佐内さんのそれは何なのか? 好奇心がかきたてられたところで1巻がおわります。
そして夏に事件が起こり、秋は上下巻をかけて栗きんとんに至る。
このシリーズは小鳩君と小佐内さんの関係を主軸にしつつ、彼らが不本意(と見せかけた本意なのかもしれないけど)のうちに身近な「事件」を解決していく過程と、要所要所で甘味を味わう様子が描かれています。身近なミステリーの設定と解法の描き方の面白さは『氷菓』とも共通している魅力だと思う。春期で描かれる、シンクが乾いているのにココアをどうやって作ったか問題とかすごく些細なことなんだけど面白かった。
このシリーズが『氷菓』と決定的に異なっているのは、ひとえに小佐内さんの得体の知れないキャラクターがあるためだと思います。『氷菓』は、基本的に常識的な高校生4人の物語だけど(そしてそれもすごくたのしい)、小佐内さんは春夏秋と読んできてもまだ正体がわからない。もしかして、でもいやまさか、小佐内さんならありうるの? っていうところも謎になっているので、もし冬で完結するのであれば、きっと次は小佐内のお話になるんだろうな。
続きがとても楽しみなシリーズです。ちなみに甘味の味わい方については夏期が特に秀逸で私はシャルロットが食べたいです。

「あのさ。この間、上ノ町の高架下に行ってみたんだ。で、電車が来るまで待ってた。そうしたらさ、うるさいことはうるさいんだけど、我慢できる範囲だったんだよね」
「よかったね。うるさいのが我慢できるひとは、大学に行っても部屋代が安く済むらしいよ」
「本当にね。でも僕が言いたいのは下宿先のことじゃなくて、あの夜のことなんだ」
(略)
「あの夜」
「うん。あの、五月の放火の夜」

こんな緊迫したやりとりのなかでこんな返しをしてしまう小佐内さんが好き。
氷菓』も読むよ!

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)