バッテリー3/あさのあつこ

バッテリー 3 (角川文庫)

積ん読もいい加減にしないといけない。次何読むかな、と思って今朝積んである山を探ってたらバッテリー文庫版3巻を発見してびっくり。買って読んだ気になってたんだった。
それで今日読みはじめたのですが、やっぱり面白くてあっという間に読了。
天才、原田巧のシンプルさに憧れつつ恐れる周囲、という関係性がとても面白い。正直言って、巧は主人公とは思えないほどのふてぶてしさだ。自分の才能を疑うことをせず、周囲に対して無関心でありながら、自己の才能が認められているであろうことにも疑いをもたない。
この巻での彼は、周囲との関係の中に少しづつあらたな感情を見いだしながら、しかし大きくは変化することはなく孤高の存在でありつづける。展西の去り際の台詞や、豪や海音寺の素直な感情にもとても共感できる部分は多いけれど、巧だけは簡単にそういった感情的な部分に相容れない。そこがもどかしくもあるんだけど、次第に読んでいるこちらもその強さをもっと見せつけてくれと思ってしまうところが、この物語の特別な点だと思う。
特にぐっと来た場面は、紅白戦で海音寺が巧をピッチャーに指名する所。
そして戸村先生の「原田は伸びますよ。いや伸ばしてみせます」という言葉を嬉しく思いつつ、これはもしかしたらなんだか怖い伏線なのかもしれないと思ってほんとに怖い。
この文庫本には書き下ろしの短編がついていて、そこには青波の視点から見た巧が描かれている。青波もいいこだしかわいいんだけど、母親との関わりなどを見ていると、どうしても巧に肩入れしてしまいたくなる。トトロのサツキとメイもそうだけど、末っ子のかわいいシーンとかを見るとお姉ちゃん&お兄ちゃんも見てあげて!と思ってしまう。まあ自分が長女だからだと思うけど。
とにかく、巧が壊れるとこは見たくない。続きを読むのが楽しみだけど、ちょっと怖い。