ありがとうとわたし

ブクマで知った記事を読んで考えたことをいろいろ。

店員に「ありがとう」と言う人が大嫌い。おかしいのでしょうか。。。
さっき別の方が、店員に「ご馳走様」「ありがとう」と言う人を見ると惚れそうになる、と書いていて、あまりにびっくりしたので質問してしまいました。
(後略)
店員に「ありがとう」と言う人が大嫌い。おかしいのでしょうか。。。 - Yahoo!知恵袋

これを最初に読んだとき、びっくりしたというか、例えばちょっと大げさに感じることはあったとしても、それは「大嫌い」っていうほどのことなのかなあ…って疑問だったんですが、Trou さんの書かれていた文章(「ありがとう」とパーソナルスペース - 花と石ころ)を読み、すこし印象が変わりました。
つまり、質問の中にあった

  • 「慣れ慣れしくない?と思います」
  • 「正直、内心で「友達でもないのに何様?」と思ってました。別にお礼言われるようなことしてないし、と。」

このへんに目をむけると、これは感謝を表明すること/「ありがとう」と言うこと、それ自体ではなく、言葉遣いにおける距離感の問題だったのかもなー、と思う。
ただ、この場合、「距離感」の捉え方が、ねじれているような気もする。

例えば、「別にお礼言われるようなことしてないし」という部分は、この質問をした人がコンビニで働いていたときの体験談として書かれている。
つまり、この人は、コンビニでバイトするのが単純に自分のため(例えば「お金を得るため」など)だから、労働に対する対価を得ているから、だから「お礼を言われるようなことしてない」って考えているのかもしれない。
でも本来、お礼を言うも言わないもお客さんの自由なわけです。でも、そこで「何様?」と感じるのは、働いている間も、自分を「コンビニの店員さん」としてではなく、単純に「わたし」として「扱ってほしい」と考えているってことなんじゃないだろうか。
もちろんわたしがわたしであることは、どこでなにをしていようがかわらない。そして「わたし」として扱われたいと考えるのも自然なことだと思う。
ただお客さんにとって、相手は「店員さん」だ。「ありがとう」はただの口癖かもしれないし、お手数かけましたくらいの意味かもしれない。もしくは、具体的に「会計のついでに道尋ねたら教えてくれてありがとう」とかかもしれない。

ちょっと話はかわるけど、私がそういった場で「いやだなー」と思うとしたら、例えば、レジで買い物する間、店員さん同士が喋っていて、まったくこっちを見てくれないときなどだ。
お金渡して、品物と交換する、そのためにレジに並んでいるのは確かなんだけど、目の前に人がいて、やりとりをしているのになんかへんじゃないか…と思う。
個人的に、客としては「ありがとうございましたー」ていわれたら、せめて「どうもー」は言っときたい。「○○円のおかえしです」ていわれたら「はい」って返事するし、ご飯食べたら「ごちそうさまでした」て言う。たとえ「仕事だから当然」なことでも、目の前にいる人から声をかけられたら、なんらかの返事をするのが礼儀だと私は思う。

しかし逆に、自分が店員として働いていたときは、お客さんがこっちを見ずに会計をすませたとしても、たいして気にならなかった。それは自分が「店員」だったからだ。お客様は神様ですなんてことは全然思わないけれども、基本的にはもてなすのが接客のはずだ。バイトじゃなくて自分の店だったら、って考えてみれば普通のことだと思うんだけど、要するに「またうちで買ってねー!」て気持ちがある場合、お客さんが居心地よく過ごしてくれるほうが自分の得になる。
(まあ、それをバイトに求める場合、そこから先は、モチベーションの話になってしまうし、個人的には、やる気のない店員さんもけっこー好きなんだけど。)

さらに話が飛びますが、むかし、旅行中とまってたゲストハウスの向いに、いつ通りがかってもひまそーな顔した女の子がいるお店があった。
通りに足投げ出して座って、道行く人を、見てるんだか見てないんだかって顔で、たぶん「いらっしゃいませー」的な意味の、やる気のない呼びこみをしていた。
ある日、朝からずっと雨が降っていて、遠出するのも面倒だったので、その子のいるお店に行ったことがあった。雨だからか、わりあいと人が入っていて、その子もそれなりに忙しそうだった。私は濃いコーヒーとパンケーキ食べて、そんでまあ雨がやむまで本読んだり、日記を(手書きで)書いたりしていた。
お会計をするとき、その子はなんか(たぶんサンキュー的なことを)言って私の手を握った。意味がわからなかった私は、へらへら笑って自分の部屋に帰ったんだけど、翌日からその子は、私の顔を見るたびに、手を振ってくれるよーになった。
つまり、私はその子に覚えられたし、私もその子を覚えた。「わたし」として扱われるようになるとは、そういうことなんじゃないかと思う。

店員さんにとって、お客さんとしての私は毎日たくさんやってくる「大勢」のなかの1人だ。
お客さんにとっては、相手(私)は名前のない「店員さん」だ。
「ありがとう」を言おうが言うまいが、だいたいがそれでうまく回ってるし、それで十分だとも思う。常に目の前の人を意識していたら、たぶん疲れてしまうだろう。

なんて、話が飛びすぎて収集がつかなくなってきましたが、
まあ、どれが正しい、なんて答えはないだろうなと思います。
ただ、私は知らない人と、挨拶程度の会話をするのがけっこう好きなので、手を振られたら、振りかえしてみたいなあと思うし、ちょっとうれしかったら「ありがとうございます」って言う。よく行く飲み屋とかでは、勢いあまって「どうも!」て気分で実際に手を振ってたりする。
「ありがとう」はその重さはそれぞれにしろ、感謝の表明であって、何かを(たとえば力関係などを)求めるものじゃないし、そういうふうに使いたいなと思う。それでも、運良く、交わすことができたらなんとなくうれしい。それはきっと一瞬だけでも、決められたマニュアルどおりのやりとりでなく、あの人、として認識してもらえるチャンスだからなのかなーと思う。
上の質問を見て思ったのは、もしかしたら、そういうやりとりが、難しくなっちゃってるんじゃないかっていうことだった。