金曜日と週末


金曜日が、1週間で1番好き。
土曜日は、1番の話ばかりしていた。1番好きな映画とか、1番好きな小説家とか、とか。それは折々でかわっていくものなんだけど、そうやって「やっぱりあれいれたい」とか「これもはずせない」とか考えるのは、頭のなかを棚卸しするみたいで楽しい。
日曜日は、この冬買ったばかりなのに、2度しかスイッチを入れなかったホットカーペットをしまった。最近買ったものの中で1番、残念な買い物だと思う。でもおかげで長風呂の楽しさを知った。
掃除機をかけてベランダで干して、大きな袋に入れてから押し入れに詰める。その後、カーペットをどけたフローリングの床を湿ったクイックルワイパーみたいなやつで拭き、乾くまでベランダに腰掛けてマンガを読んだ。ホットカーペットは濃いグレーだったので、それが敷いてあるだけでなんとなく部屋がひきしまって見えたんだな、ということを、白っぽく間延びした部屋の様子を眺めて考える。お湯をわかしたけどコーヒーがなかったので、スーパーに行くつもりでCD屋に寄り、目当てのものを買わずに、店内でかかっていた新譜を衝動買いした。
なるべく時計を見ずにいれば時間が進むのも遅くなるような気がして、まだ明るいからという理由で喫茶店に寄る。頼んだ飲み物がでてくるまでに短編を2本読み、飲みながら3本読んだ。それで、日本の小説を読むのは飲み物を飲むことに似ていて、翻訳小説を読むのはおおむね固いパンを食べるようなものだ。どちらがおいしいとかではなくて、読む感触そのものが違う、などということを考えてみる。まあ、何事も「一概にはいえない」のだけど、ともかく久しぶりに読む日本語で書かれた物語はすらすらと気分に入って、それはやはり水を飲むように自然だった。
背後で日がくれかけたのを感じたので、あわてて本を閉じ、会計の際、いつももの静かな店長さんが髪を切った事に気づいて100円玉を落とした。こういうときさらりと「似合ってますね」とか、言える人にわたしはなりたい。セロリ、ほうれん草、里芋山芋にんじん。つやつやした床にスーパーの袋を置き、やっぱり敷物を買おうかなと思う。たぶん来週あたり。
日曜日の夜はいつも、早く金曜日にならないかなと思っている。お湯をわかして、結局コーヒーを買い忘れたことに気づく。