「髑髏城の七人 Season月 下弦の月」12月頭と後半&年始の比較と感想

髑髏城です。まだ書くのかという感じですが、私のTwitter TLにはこれから初見の方もいるので、ネタバレっぽくなりそうなことはこっちに書こうと思いました。あってよかったはてなブログ。というわけで、2018年も3日昼の下弦&7日昼の上弦を経て、ますます沼の広さに意識を奪われていますが私は元気です。
髑髏城の何がそんなに沼かって、最初は物語とキャラクターの面白さに尽きると思っていたんです。でも、上弦を見て、役者さん&チームごとのキャラ解釈を見るのも楽しいものだと気付いたことで、バーンと楽しみの枠が広がった感覚がありました。
でもね、たぶんそれどころじゃないんですよね。
私は髑髏城自体、下弦が初見だったのですが、その後色々な方の感想を読んでいるうちに、そうか、上弦下弦だけでなく、これまでの髑髏城との比較という楽しみもあるんだな……と気づかされました。中でもワカドクロというのはすごいらしい。そんなわけでまずはワカドクロを見ようとタイミングを計っていたのですが、今月末にゲキシネでかかるということを知り、そこで見ることに決めました。
正直、月に夢中になっている今の楽しい最高大好きな気持ちが、ワカドクロを見ることでどうにかなっちゃうんじゃないかと怖い気持ちもあるんです。だけど月が終わってから見て記憶を上書きされてしまうのも辛い。なので2月を残した1月末のタイミングで見れるならちょうどいいような気がしています。
なので、現時点の、月の感想をもう一度書いておこうと思いました。

※現時点での私は、上弦下弦どっちも好き、だけど下弦廣瀬蘭にはまっているので下弦を多めに通っています、でも上弦ももっとみたいよママ…というところです。

《以下思い切り内容に触れている&妄想多めです》

捨之介

12月のはじめ(12/2マチネ、12/9ソワレ)に見たときと12月の終わり(12/27ソワレ、12/3マチネ)に見た時ではずいぶん印象が違っていた。すごくよくなっていました。
まず捨之介にめちゃくちゃ安定感が出ていた。THE主人公。
さすがの宮野さんなので、最初に見た時から台詞回しには安定感があったんだけど、さらに盛ってきてる。宮野真守の捨之介になっていた。常に楽しそうで、頼り甲斐がある兄貴で、ちょっとチャラくて、懐が深い。
初見でちょっともたつくなと感じた「底抜けのバカってことだよ!」の部分も先に底を見せる身振りを入れてきたりとかでちゃんと笑いどころに変えていた。贋鉄斎の工房を訪れるシーンも、贋鉄斎のボケのいなし方に遊びを入れてきてる。でも決して悪ノリじゃなくて、捨之介と贋鉄斎の関係って昔からこうだったんだろうな、だからこそ協力してくれるんだなって説得力が出ている…。人徳人徳。

それから1幕終盤の、これから1人で髑髏城に乗り込もうというシーン。
捨之介さん、蘭兵衛の頭を、ポンポン、ってするんですよね…。これだけで、あっ捨之介は3人の中で兄貴分みたいな存在だったのかなってイメージに変わった。そして蘭兵衛も極楽に「いい男を友達にお持ちじゃないですか」って言われてすごく嬉しそうな顔をする…。
そんな兄貴分だからこそ、彼は天魔王を「止めに行く」と言うし、止めることができると思っている。甘ちゃんだなと言われようが(そんなセリフはないけど)、ああ甘ちゃんだ!って笑って見せそうな捨之介でした(歯並びが良い)。

でも、2幕になると、そんな捨之介の甘さが露呈してしまうんですよね…。
そんな捨之介を救うのが霧丸です。霧丸は、たぶん愛されて育った子で、きっと自分を守ってくれた人たちに近いものを捨之介に感じたんじゃないかなと思う。だからこそ、自らの恨みの大元に彼が関わっていることを知ってなお、捨之介を信じると決める。
だけど天魔王はその甘さを拒絶するんですよね。たぶん天魔王にとって捨之介の甘さ優しさは「屈辱」だったんじゃないかな。
でも捨之介にはその受け取られ方が想像できない。だからあのラストにショックを受け、「止められなかった」自分の無力さにうずくまってしまうのではないか、と思いました。

霧丸に支えられながら髑髏城を脱出しようとするところで「俺がひきつける。皆は先に行け」みたいなことを言い出す捨之介。12月27日のときはちょっと泣いてたような気がする。
兄貴分としてかわいがっていた(つもりの)天魔王を「自分が殺した」という事実を受け止めきれないという様子にみえました。そういうとこ、本当〜に甘いんだけど、そこで霧丸が叱咤するのがよい。
まさに「お前がお前を信じられなくても、お前を信じる俺を信じろ!」(下弦の2人は本当グレンラガンのカミナとシモン)だなと思いました。
兄貴分と子分みたいな関係性だった2人の力関係がいつの間にか対等になってる。大きくなったね霧丸。。。
本来なら、感情的なクライマックスはラストの水辺で家康に「だったら好きにしな」と言うシーンに持ってくるものなのかもしれないし、最初に見たときはそう感じました。けれど、あそこは霧丸たちのカットインに力点があるので、余韻を残すならこちらだとこのシーンにテコ入れしてきたのかなと感じた。
水辺のシーンは「精も根も尽き果てた」という状態に近く、そこに霧丸が助けにくるのが捨之介にとっては「人を信じるということ」が改めて報われた、「人を信じる自分」を信じていいんだと改めて思える出来事になったのではないでしょうか。
うーーーん、捨と霧の関係性、本当に尊い

天魔王

一方の天魔王、同じ脚本にも関わらず上弦と下弦が全く違うストーリーに見えるのは、早乙女太一さん、鈴木拡樹さんそれぞれの天魔王解釈の違いによるところが大きい。
鈴木さんは憑依型と評されることが多いようですが、そう見えるくらいに、ものすごく努力家なんだろうなと思うんです。自分の使えるもの(特に表情筋とか)全部使って役に尽くしている感がある。
だから天魔王もすごく丁寧、という印象になってきている、気がします。気がします、としか言えないのは天魔王自身が「天として振る舞おうとしている」存在なので境目が見えないんですよね…。
鈴木さんの天魔王はたぶん、恐ろしく、残酷で、冷酷無比な天魔王に、なりたいと願う小狡い男。
そのメインの部分は変わっていないのですが、12月末に見た時は最初に見たときより「悪」の要素が強まっていると感じました。

たぶん下弦の天魔王は自分こそが「天」の才を持っていると信じていて、そう評価されるべきだと思っているのに最後まで殿が自分の才を認めてくれなかった→ならば俺が、という発想で天魔王になるんですよね。
だから蘭兵衛を呼んだのも「天はそうするものだ」と思ってるからなんじゃないかな…。12/27ソワレの「待っていたぞ、蘭丸」のシーン、破顔といっていいほどに笑っていて嬉しそうで、アッこの人もしかして殿のロールプレイしてるのかな?って思いました。怖い。
「仲間の命乞いか」と言いながら鼻で笑う(ここ上弦とすごい違うポイント!この差がどちらも好き)のは、とかなんとかいってお前は殿(≒天である自分)を選ぶだろうと余裕ぶってるのかなという気がしてきます。

なので、天魔王はずっと「蘭兵衛は俺に従っている」と思って接しているんですけど、ここに認知の歪みがあるんですよね。蘭兵衛にとって天魔王はただの触媒に過ぎず、口説きの後はきっと「人の男」としか見てない。

私がすごく好きなのはクライマックス(クライマックスだらけでどこかわからないですが、蘭兵衛VS天魔王&生駒のシーン)へ移行する会話の部分です。
「この城は捨てる」と天魔王が言った瞬間、蘭兵衛は天魔王を切り捨てようとする。天の夢を叶えるために戦うことしか考えていないので障害物に成り下がる。
そして天魔王は「兵は置いていけ」と言われた瞬間、自分が蘭兵衛にとって天でもなんでもないことに気づかされてしまった、と感じた。

上弦と違って下弦の無界屋襲撃シーンは圧倒的に蘭兵衛が狂ってるんですけど(鈴木天は軍師タイプなイメージ)、下弦はここでちょっと天が気圧されて見える。殺陣の振り付け違うのかなって上弦と見比べて見て思うんだけど、やっぱりこのシーン、下弦天はあんまり楽しそうじゃなくなってる、気がする(12/2の時点ではもうちょっと楽しそうだったはず)。
なので、もしかすると、ここあたりから蘭兵衛の優秀さを思い出してしまったんじゃないかなって思っています(完全に私の妄想です)。それはつまり「自分と違って蘭兵衛は殿に評価されていた」と思い出すことでもあるんですよね。殿…。

蘭兵衛を得て天に近づいたつもりが、蘭兵衛によって天ではないことを暴かれた末の捨之介との対決。
捨之介に「俺の背中には仲間がいる」と言われた瞬間、口説きの「仲間の命乞いか」と言う場面とは打って変わって憎くてたまらないといった表情が見えます。
一人で頑張ってきた天魔王にとって(上弦と違い、たぶん生駒との間に信頼関係もなさそう)それは屈辱でしかなかったのではないでしょうか。そして一矢報いようとした末に掴んだ捨之介の刃を自分に向けたのは、打算だと思いますが、それが捨之介には効いてしまうんだな…。
(ちなみに鈴木天はあんな派手に去っておいて、実は生き延びて次のチャンスを狙うしぶとさがありそうな気もします)

ーーというのが年末年始を経て鈴木天に感じたことでした。
27日と3日という連続した公演で一番ブレがなかった。だからこそ「まとまってる」と感じてしまうところもあるんだけど、その器用さがまた天魔王の切なさにも繋がっている気がして私は好きです。
殿が蘭丸を贔屓せずに天魔王のこともちゃんと褒めてあげてたらこんな風にはならなかったんじゃないですかね〜と思う。

ただ、1つ納得いかないのが「明智をそそのかしたのも〜」という捨のセリフ。
それはほんとうに天魔王の仕業だったのか、ここはまだ考え中。

蘭兵衛

蘭兵衛についても、12月の頭と末ではかなり印象が変わっていました。
何より殺陣が格段にうまくなっている…!
廣瀬智紀さんって舞台挨拶やブログの印象ですごくふわふわした人、というイメージがあり、だからこそそういう役を振られることも多かったと思うんですが、この蘭兵衛はすごく「当たり役」だと思うし、確実にターニングポイントになる舞台だと思うので、今この瞬間を見逃せないという気持ちでいっぱいです。本当に目が足りない。
12月の頭に初めて見たときは、きれい!儚い!闇落ち!という感じで夢中になっていたのですが、12月後半ではかなりギャップのある役になっていました。

前半の無界の里シーンでは、女の子たちの輪にもすっと入っていける、柳のような男性というイメージで(蘭兵衛さんってきれいな顔してるよね〜って女子たちに言われてそう)、ここは初期から変わっていないと思います。
それなのに初めて「天魔王」に会うシーン、名前を呼ばれてハッとするところでスイッチが切り替わり始める。上弦は数珠を握って耐える「葛藤」に近いと思うんですけど(そこが人間くさくて良い)、下弦はむしろ失われていた記憶が蘇ってしまった、に近い印象(あとこのシーンは、里に帰る際の蘭兵衛の走り方がとてもきれいなので好きです)。

捨之介を見送った後、心配した極楽を抱き寄せ頭をぽんぽんとしてみせる、その時の目。それ頭ぽんぽんするときの目じゃないから!!というくらい怖い目を君はしていた…(12/27)。
だから黄泉笛のシーンはわりともう口説かれる気満々に感じます。ここの殺陣はすごく飛ぶようになってるんですけど半ばこの世ならざるものになりつつある感じで良い。
そして白い彼岸花花言葉が(諸説あるようですが)
「思うのはあなた一人」
「再会を楽しみに」
とのことで。蘭兵衛さん、、、。

そして2幕冒頭。殿の片鱗を求めて髑髏城を訪れた蘭兵衛の前には、天魔王を触媒にして殿が現れたんじゃないかなと思います。
なぜなら、無界の里襲撃シーンのラスト、門の前に立って「咆えろ咆えろ」と笑う天魔王の後ろで、蘭兵衛はずっと何かを目で追っているんですよ…。これは12/27も1/3もやっていました。
つまり蘭兵衛は天魔王なんて全然見ちゃいなくて、その目には多分、殿が見えているんじゃないかなと思います。殿と駆けた戦さ場を思い出して「楽しいなぁ」と呼びかけるのは、そこに殿を感じられるからなのでは。殿の亡霊に取り憑かれ、亡霊となった蘭兵衛さん…。

そんな蘭兵衛が最後に天魔王をかばう理由について考えてるんですけど、、、最後に天魔王に目をやられるじゃないですか。あれで、もしかして、殿の亡霊も見えなくなって瞬間正気を取り戻したということだったりするのかな。。。ここはまだ考え中です。
1/3は、目を切られたすぐ後、「殺す、殺すッ」って呟きながら天魔王を追うようになっていました。
でも27日のときはここが「殺せ」に聞こえて、なんていうか、殿が見えなくなって自分のしてしまったことに気づいた、とかだったら恐ろしいなと感じました。かなり妄想ですけど、、もう私も蘭兵衛さんに取り憑かれてしまっているので…。

後、廣瀬さんは瞬きをしないのが得意みたいで、1幕では普通に瞬きしてて、2幕になると全然瞬きしないので本当に亡霊感がある。そして階段落ちの後の死に顔がいつも美しいです。

霧丸と極楽太夫

霧丸、霧丸もすごいよくなっている。。。捨之介との距離がぐっと縮まっています。
2幕、「俺を騙したな!」と捨之介に詰め寄るシーン、避け続ける捨之介の言葉を信じよう、と決める瞬間の、胸倉掴んで胸に顔を埋めるみたいなとこ、最高にかわいい。。これは宮野さんとの身長差があってこその構図だなと思います。
そしてさすがの霧ちゃん、いちど信じたことは貫き通す男なので終盤の頼り甲斐がはんぱないですね。霧ちゃんがもう決めたというならその夢は叶うと思う。応援しています。捨のことは頼んだ。

それから極楽は、蘭兵衛と兵庫、それぞれとの関係性が少し変わったように感じた。
極楽から蘭兵衛に対するラブは確実にあったと思うけど、蘭兵衛はどうか…ちょっとよくわからないですね…。あの人、殿のことしか考えてないんじゃないですかね。
兵庫に対しては終始まんざらでもない様子にみえる&蘭兵衛もそれをニコニコ見ている、ので、極楽は蘭兵衛に対して、かつては惚れていたけれど今は姉のように接している、って感じなのかなと思っています。
そして12月頭との変化といえば、蘭兵衛の最後に、蘭の手を必死に拭うという仕草が入っていました。
きっと極楽は、彼を「生」の側に戻すことを自分の役目みたいに思っていたんじゃないかな。でも力及ばなかった、という思いに感じられて切ない。
そして、ラストの兵庫のプロポーズを受けて、本当に泣くのをみたのは12/27が初めてでした。
ここ、上弦では兵庫に泣かされるんですけど、下弦では極楽に泣かされるシーンになっていたと思います。

上弦と下弦

どっちがいいとかじゃないんですよね……どちらにもいいところがある。
ただ明らかにここはこっちが好み、と感じるところもあって、
無界の里に向かうシーンの捨(イントロのチャッ! チャッチャッ! ってところで傘を構えてステップ踏む捨!!)、狸穴&おきり(あぐらからの土下座→カーテンコールで狸穴に手を振るおきりで毎回泣けてしまう)、贋鉄斎の「ゆぅうう~げん!」とかは下弦が好き。

でも生駒の最期(これは早乙女天魔王だからこそなので、下弦にはあわないけど)や、兵庫のプロポーズのセリフ(これもキャラの年齢感と繋がってるけど)は上弦が好き。

いやでもね、どっちもいいんだよ…。どっちもいいのでどちらかを見た人にはもう片方も見て欲しい、と思っています。
そして私は早く他の髑髏城も見なくてはならない…。

月髑髏、まだ見れます!

下弦の月はまだチケット買える日がありますし、上弦もたまに戻ります!
あと前日販売&当日券販売もあってこれが意外と良い席でたりもするので(1/7の上弦は前日webで行きましたが16列目でした)オススメです。そして見た方はぜひ私に髑髏城のお話をしてください…当方切実です。
ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 Produced by TBS|チケット情報・販売・予約は ローチケHMV[ローソンチケット]