「クアントマニア」「別れる決心」「エンパイア・オブ・ライト」をみました

友人とのLINEでおすすめしたりされたりという流れがあり、木曜日と土曜、日曜にそれぞれ1本ずつと久しぶりに立て続けに映画をみた。引っ越して以降、映画館がたくさんある街に近づいたので、映画に行きやすくなって嬉しい。ちょっとそこまで感覚で映画を見に行けるなんていまだに夢のようです。

そんなわけで2月最後の週末は、「クアントマニア」「別れる決心」「エンパイア・オブ・ライト」をみました。

ところで、私は日記(この日記)に何かの感想を書くとき、ネタバレになりそうな部分をぼかして書くことが多く、今ではそれが癖になっている。しかし、もう19年(19年!?)近くやっている日記なので、今となってはかつての自分がぼかして書いていたことがまったく意味不明だったりもする。
それでは備忘録の役割を果たせないというわけで、今後は、あえて積極的にネタバレするというのではないけど、もう少しはっきりと、思い出せる程度に書きたい。まあ最近はそれほど「感想」って書いてないけれども。

「クアントマニア」(監督:ペイトン・リード)

見る前にTwitterドラえもん映画みたい、という感想を見ていたせいもあるのかもしれないけど、
かつての子ども向けSF大作のような雰囲気を感じてとても楽しかった。
家族みんなが活躍するのもいいし、キャシーの無鉄砲さをたしなめはしても否定しないところも良い。さまざまな可能性世界でスコットたちが団結する理由もぐっときます。
それから、量子世界住人が、ショーン・タンの絵本に出てくるキャラクターっぽくて(特にあの生きてる建物は「ロストシング」を思いだした)それも好きポイントでした。
モードックは「オズの魔法使」のオズっぽい悲哀があって良いキャラクターだったな。

別れる決心(監督:パク・チャヌク

「荊の城」を「お嬢さん」に仕立てたパク・チャヌク監督はかなりのロマンチストだと思うのですが、今作も、その監督のロマンチストさがよく出ていた作品のように感じた。
特に異文化で育った、母国語が異なるもの同士のやりとり、相手の言語を学習するということ、翻訳アプリを介した声の印象、など言語をうまく使って感情を盛り上げていくところとか、すごくロマンがある。運命の女にあなたの未解決事件になりたいって言われたいしね。
なぜ主人公たちが惹かれ合ったのかはよくわからなかったのだけど、見終わった後に教えてもらった記事で、彼女の話す韓国語は古い書籍と映画で学んでいるために古風なもので印象に残る…といった解説を読み、少しだけ掴めたような気がした。そのように「言語」に重心がある映画であったと思う。

ただ最初、被害者の写真をやたらと露骨に見ていることから、暴力に惹かれる主人公の話なのかなと思って見はじめてしまったので(朝田ねむい「ディーン」を思い出していた)ヘジュンを警戒して見ており、ついに最後まで警戒したままだった気はする。

エンパイア・オブ・ライト(監督:サム・メンデス

予告を見た段階ではぴんときていなかったのだけど、友人の勧めで見に行ったらこれがとてもよくて、何より映画館で見て良かったと思う作品だった。
物語は、80年代イギリスの、海沿いの田舎町にある映画館を舞台に描かれる(おそらく「寂れた」映画館なのだと思うけどとても素敵な場所だった)。
映画館で働く主人公のヒラリーはおそらく精神疾患の治療中で、職場の上司に性被害を受けている。そして映画館に新しくやとわれたスティーブンは激しい人種差別にさらされている。
しんどい描写も多いのだけど、困難を抱えて生きること、困難の最中にある人に寄り添うことの勇気と難しさ、どれも0か100だけじゃないということをいろんな角度から描いていく丁寧さが印象に残る。
私は主人公2人の関係を、全てを投げ出さずとも寄り添うことはできるし、恋でなくとも大切はある、という決着のように感じた。
映画の中に「映画とは1秒間に24フレームの静止画の明滅によって暗闇を消し去るものだ」(大意)というセリフがあって、それはまさしく”映画”の寄り添い方を言い表す言葉だろう。
私が映画を好きな理由として、これからきっと長いこと、あのセリフを思い出す。


はっきりできたかな。できてない気もする。少しずつやっていきます。

(「ディーン」はこの単行本に収録されている)