ミスト

監督:フランク・ダラポン
(内容に触れています)
いろんな人の感想を寸止めにしてたので早く見にいきたかったんだけど、やっと、見にいってきました。面白かったです。でもその面白さは私が思い描いていたのとちょっと違ってた。
すこし前に『クローバーフィールド』を見にいって、そこで『ミスト』の予告を見たりしたので、どことなく同じ系統の、「何か」に襲われる映画だと思っていたのだけど、この『ミスト』の恐怖はそこを中心にしているのではなかったと思う。対象が見えないことによる「わからなさ」にじらされた『クローバーフィールド』では、恐ろしさに遭遇した人々がほぼ無条件に団結するのに対し、『ミスト』の恐ろしさは「わからなさ」を前にして、見えなくなるのは「人」である、ということだったと思う。
場面ごとに一寸先は闇という言葉が浮かぶ。闇というのは、必ずしも悪い方向に進む…という意味ではなく、単純に「わからない」ということだ。普段暮らしている中で、どれだけ暗黙の了解をよりどころに生きているかがよくわかる。人は何の理由もなく他者を攻撃しないものだ、とか。
物語の鍵となる登場人物の中に、キリスト教根本主義者の女性がいるのだけど、ここで『ドッグヴィル』のグレイスを少し思い出したりした。「宗教」というモチーフの共通点より、隔離された空間の中での正気の失い方が似ているような気がする。言葉を浴びせられ続けると、その意味を問い返すことが難しく/おっくうになって、疑わずに単純に受け入れるほうがずっと楽なことに思えてくる。
それは扇動者となる人の存在だけでなく、目の前の状況に対応することに必死でいると、そのほかの可能性が見えなくなってしまう、そういう恐さだと思った。とはいえ、その可能性を信じるには、力がいるし、それが必ずしも良い方向へ導いてくれるわけではない。ただ一寸先は闇であることだけが平等なのかもしれない…とか考えていくとどんよりする映画でした。(ほめてる)

余談

ただ「それ」の造形が、予告で思い描いてたのとずいぶん違ってたのはびっくりした。わたしが思い描いてたのはすごいでかいヒトの形っぽいなにかだった。そしてソレに想像だけでこわがり過ぎてしまったので、あれが最初にきたときに「あ、そっちかーよかったー」みたいな反応になってしまった気がしています。ぜんぜんよくない。