深夜のドーナツ屋

近所に、夜中にオープンするというドーナツ屋さんがある。なぜ夜中にオープンするのかといえば、そこが都内出荷用の工場でもあるからとのことなのだけど、夜中とドーナツ、という言葉の響きはとても魅力的で、その存在を知ったときから時折通っている。
寄るのは大抵、飲んだ帰り道の、少し気が大きくなっている時だ。
気が大きくなっているから、特にカロリーなど計算することもなく、あれこれと注文してしまう。家に帰って、コーヒーを入れて食べるときもあるけれど、たいたいは食べずに眠って朝に食べる。つまり自分は、ドーナツが好きというよりも、夜中に、ドーナツを買うのが好きなのだと思う。
いつもの帰り道、時計を見るとちょうど日付が変わる頃で、それならとまっすぐな路を左に折れると、真っ暗な通りにひとつ、灯りのついたお店が見えて来る。たまに人が並んでいることもあるけれど、0時すぎにはだいたいがらんとしていて、ドーナツの種類も3、4つ。店員さんはもの静かで、レシートのインクも薄い。ドーナツの入った白い紙袋は暗い帰り道に薄明るく、あとは家に帰るだけ。
眠る前、自分もそんなお店をやってみたいなと考える。何を売るのがいいか、どこで売るのがいいか、昼間に出かけたいときはどうすればいいか。いろいろ考えることはあるけれど
1番大事なのは、そのお店に向かうという目的がなければ通らないような道で、特に緊急性のないものを売るということだよなと思う。