日本シリーズのあった1週間(前編)

昨年春、ドキュメンタリー本をきっかけに野球に興味を持って*1、選手名鑑を買ってDAZNに入り、手探りで野球を見始めた自分が、まさかその翌年に好きなチームのリーグ優勝どころか、CS、そして日本シリーズまで追いかけることができたなんて、あまりにも恵まれすぎていると思う。
自分は「38年ぶり」の重みを知らない。
それでもこの得難い、特別な1年を思い切り堪能できたことが素直に嬉しい。

これが、38年後も語り継がれる1週間になるように。
そんな気持ちで過ごした日本シリーズの1週間の日記と試合展開をメモしておきたいと思います。


写真は2023年8月22日の京セラドーム


10月28日/1試合目

京セラドーム/先発:山本由伸(オリックス)vs村上頌樹(阪神))

初戦は友人と吉祥寺のスポーツバーで試合をみた。
お店にいたお客さんは、おそらくはほとんどがオリックスでも阪神でもないチームを応援している野球ファン、という雰囲気で、盛り上がりも程よい感じ。ビールもおいしかったし、チャンスがあったらまた行こうと思う。
 写真は試合開始前、始まる頃には満員だった
先発は今年初めて1軍ローテ入りし二桁勝利をあげ、日本シリーズの初戦先発にまで上り詰めた3年目の村上頌樹投手。
この記事のセリフが村上投手のマインドをよく表していて好きです。

135日前。7回パーフェクト投球の1日から変わらないことがある。
「ちゃんと抑えてヒーローになるか、バリバリ打たれて炎上して2軍調整するか。今日は俺どっちや! って思ってます」
https://www.nikkansports.com/baseball/news/202308250001613.html

昨年の日本シリーズはテレビで見ていて、とにかくオリックスは強い、というイメージがあったのでかなり緊張していたのだけれど、結果的にはシーズン中の調子の良い時を思わせるような、打線のつながり方にわくわくする試合だった。

  • 試合展開メモ

1回表に中野選手のヒットがあったものの、そこからは阪神オリックスともに0を重ねていく展開。

動きがあったのは5回表。佐藤輝明選手が出塁、続くノイジー選手の打席で初球から走り盗塁成功、続くDH渡邉諒選手のタイムリーで1点を先制。そこからも木浪、近本、中野とヒットが続いて一気に4得点。

さらに6回表、2023年のシーズンではリーグ最多、99の四球を選んだ大山選手が今回の日本シリーズ初となる四球を選んで出塁。ノイジー選手のヒットで1アウト1、3塁となったところで、今年「恐怖の8番」という異名が定着した木浪選手、続く坂本選手の連続タイムリーで1点ずつを重ねる。1番近本選手に打順がかえったところでオリックス側のピッチャー交代。近本選手は四球を選んで満塁。さらに中野選手のタイムリーでこの回なんと3点を重ねて0-7。

さらにさらにの9回表。近本選手が本日3本目のヒットで一気に2塁へ。3番森下選手もまけじとヒットで1、3塁。大山選手再びの四球を選び満塁、佐藤輝明選手のサードゴロで1点追加の0-8。

投手は、村上選手、加治屋選手と繋ぎ、9回は岩貞選手が3者3振で締め括り大事な初戦を勝ち取った。

結果:オリックス0-8阪神


10月29日/2試合目

京セラドーム/先発:宮城大弥(オリックス)vs西勇輝阪神

起きて掃除をして洗濯機をかけている間に近所のモーニングへ。
本を読むつもりだったのだけど、近くに座っていた二人連れのおじいさんが日本シリーズの話をしているのが嬉しくて頭がそちらに引っ張られてしまった。

普段、球場以外で「この人野球ファンだな」って人を見かけることは少ない。
でも通勤電車で中継を見ている人を見かけたり、球場帰りには同じ最寄り駅で降りるユニ着用のファンがいたりもするので、ただ気づかないだけなんだろう。
平日に備えたおかずの作り置きと風呂を済ませ、準備万端で試合開始を待つ。

この日は結果的に、昨晩とぴったりスコアも真逆な試合展開となった。
しかしあまり不安には思わなかった。
なんというか「リーグ優勝」をしたチーム同士なんだから、それはいい試合になるよなと納得するような気持ちで見た。

  • 試合展開メモ

1回裏、オリックス西野選手出塁後、森選手のラインギリギリの打球を1塁大山選手が裁きダブルプレーか、という場面で、審判団審議からのファウル判定となった。リプレイも見たけれどこれは私にはちょっとわからないやつだった。岡田監督の抗議に8月18日の横浜スタジアムを思い出す。

3回裏にオリックスが先制。4回表で3つのヒットがでるもののランナーを返せず続く4回裏、2アウトから宗選手が四球を選び、じりじりと1、3塁の局面、野口選手のタイムリーから廣岡選手、中川選手とタイムリーが続いて一気にオリックスが3得点。ここで阪神の投手は西勇輝選手からビーズリー選手に交代となった。

その後もなかなか切り口が掴めないまま、投手が岡留選手に変わった7回裏に2アウト満塁のピンチを迎え、火消し役として島本選手を投入するも代打のゴンザレス選手のタイムリーで走者一掃の7-0に。
さらに8回裏にも1点を重ねられ、なんと昨日と真逆の8-0で試合終了となった。

とにかくオリックス先発の宮城投手が手強かった。阪神3番手で登板した岡留投手の大量の汗が印象に残ったが、この厳しい場面を経験したことは今後の飛躍につながるのだろう。特に好きな選手の一人である島本さんが打たれたのは悲しかったが、島本さんにはきっとこのシリーズでまだ出番があるはずだ。

完封負けは空気が重くなりそうなところだが、岡田監督は(自分の背番号80と重ねて)「番号的にはちょうどよかった」「甲子園帰ってからや」などと発言しており、さすがだった。*2

結果:オリックス8-0阪神


10月31日/3試合目

甲子園/先発:伊藤将司(阪神)vs東晃平(オリックス

移動日(実際には移動の必要ない距離で開催されたわけだけど)を1日挟み、甲子園球場へ移動してからの3戦目。
この日の午前中は、先日のドラフトで阪神に2位指名された椎葉選手が登場曲案を募集している、という記事*3を読んであれこれ考えていた。椎葉選手は藤川球児さんに憧れているということだったので、かねてよりリリーフ投手に使ってほしいと思っていた曲をあげていくうちに、私のリリーフ投手へのイメージは「閃光」なんだなと思ったりした。

夕方、例によって定時に会社を飛び出し、ラジオを聴きながら帰宅する。「今日も半袖で投げています」という実況で球場が目に浮かぶようだった。2023年の11月は異常気象とも言えるほどの暖かさ(というか暑さ)だけれど、それでも日が暮れた浜風の吹く球場は寒いだろう。
しかし伊藤将司投手といえば半袖なのだ。

  • 試合展開メモ

2回裏、4番大山選手のヒットで出塁。6番ノイジー選手のヒットで1、3塁、続く坂本選手のセカンドゴロで1点先制。幸先が良いと思われたけれど、3回表、オリックスの捕手若月選手の見事な2塁送球(若月アローと呼ばれているらしい)によって流れが途切れた感触があった。

続く4回表に頓宮選手のホームランで1-1、さらに5回表、廣岡選手のショートゴロの間に1点追加されたところから、悪送球もからんで1-4まで引き離される。

しかし7回裏、坂本選手、木浪選手のヒットから近本選手の四球で満塁。中野選手のゴロ、森下選手のタイムリーで3点を追加で4-5に詰めよる。こういった、下位打線から上位打線につながって畳み掛ける感じはまさに2023年の阪神タイガースだ。

そこから先がなかなか掴めず9回裏、オリックスは守護神、平野選手が登板。2アウト1、2塁という1打同点の状況で大山選手を迎えるも、空振り三振で辛くも届かずに試合終了。継投は伊藤、ブルワー、岩貞、石井、桐敷。

負けは負けだけれども、7回裏からの勢いに流れを取り戻した余韻が残る。木浪選手の3安打という好調にも希望がある。

結果:阪神4-5オリックス


11月1日/4試合目

甲子園/先発:才木浩人(阪神)vs山﨑福也(オリックス

甲子園2戦目。1勝2敗となり、相手に王手をかけさせないためにも絶対落とせない試合。
今日も今日とて定時に慌てて会社を飛び出し、ラジオと共に帰宅。

この日は阪神の先発陣の中でも特に好きな、そしてリーグ優勝をした9月14日の先発でもあった才木投手の先発日だったので、勝手に今日はきっと大丈夫だと期待していた。

しかしラジオを聴きながら旧Twitterの野球TLを見ていると、どうやら才木投手が出血しているらしい。マメが潰れたのか、爪だったらどうしようなんて心配しながら帰路を急いだものの、その間に才木投手は盗塁まで決める大活躍。
帰宅後に映像で見たその投げっぷりには、鬼気迫る迫力があった。5回表までしっかり投げてから交代、夜にインスタストーリーで指は大丈夫ですという報告もあってひと安心。

この日はとにかく「流れ」を感じる試合だった。流れを引き寄せた方が勝つという試合で、岡田監督のファンをも巻き込む采配が勝利を引き寄せた試合だったように感じた。
試合後、母親から「まさか大阪にいないよね?」とLINEがきて、感想をあれこれ話すなどした。

  • 試合展開メモ

1回裏、1番打者近本選手の出塁から中野選手の送りバント、からの昨日ついに復調の兆しがあった森下翔太選手のタイムリーで先制。
今年の森下翔太さんは本当にすごかった。私の中の「ルーキー」概念は森下くんで定着した気がする。注目を浴びるほどに調子があがっていくような天真爛漫さと、打てなくて涙を浮かべてしまうような負けず嫌いさ。29日には監督に「また泣いたらあかんから」*4なんてコメントされていたのにもう復調している。

2回表にはオリックス頓宮選手がフェンス直撃ヒットで一気に3塁。紅林選手のタイムリーで1-1の同点に詰め寄られるも、2回裏には木浪選手意地の出塁、才木投手が四球を選んで1,2塁となったチャンスに近本選手のタイムリーでふたたびリード。才木投手はこの回盗塁も見せた。

さらに3回表、オリックス森選手の打席での6-3ダブルプレーで流れが変わったのを感じた。才木投手も力が少し抜けたような雰囲気で、そこから5回表まで見事に投げ切る。
5回裏、またもや先頭打者近本選手がヒットで出塁。投手のエラーなども絡みつつ1点を追加。

6回表からマウンドにあがったのは今年大活躍し監督にもスペードのエースと称された桐敷投手。しかし回をまたいで7回表のマウンドでは、サードファンブルも絡んで先頭出塁を許してムードが変わリ、オリックス宗選手のタイムリーヒットにより3-3の同点となる。ここでサードは糸原選手に、投手は石井投手に交代となった。

7回裏、大山選手の打席で一打勝ち越しの構図となるが三振。

8回表、1アウト1,3塁となり、流れがオリックスに傾きかけたところで島本投手登場。オリックス廣岡選手の盗塁成功、3塁走者の紅林選手の走塁アウトがあり、2アウト1,3塁となる。尚もピンチが続く場面で、再びの投手交代。

CSから日本シリーズの流れでは、こういう場面に出てくるのは島本、石井、桐敷のうちの誰かなのだが、この日はすでに三人とも出ている。誰だろう、、となったところでまさかの65番、湯浅投手が登場した。
年始にはWBCでも活躍し、2023年のシリーズ開幕時には守護神を任されていたが、その後、けがなども重なり長いリハビリ生活を送っていた。1軍の試合はなんと6月15日以来。こんな展開、監督以外誰も想像していなかったのではないか*5

湯浅投手の登場とともに、球場の雰囲気がガラッと変わったのが画面越しにも伝わってくるようだった。みんな待っていたんだなと思う。笑ってマウンドに向かう様子が嬉しい。そしてたった1球を放ち、セカンドフライ、3アウトとした。

同点のまま、9回表を岩崎選手が危なげなく抑えて9回裏、近本選手の四球出塁からの中野、森下に申告敬遠。1アウト満塁となったところで、まるで昨日の再現のように打席は再び大山選手へ。2023年の不動の4番打者の、今度こそのサヨナラヒットで勝利が決まった。

サヨナラ後、責任を感じていたのか涙ぐむ桐敷選手を、投手陣が明るく迎えていたのが印象に残る。

結果:阪神4-3オリックス

youtu.be


(長くなったので5試合目からは後日あげます)