2023年の映画ベスト10

野球にはまリ、週6で試合を見ていた2023年は、可処分時間が激減し、ついに長年契約し続けていたNetflixも解約するなどしました。
そのせいでドラマ系はほとんど見れなかったのですが、それでも映画は映画館という、他に誘惑のない状態で見るものなので、なんだかんだ見た本数は例年と比較してそれほど減っていませんでした。

そして今年は、近年稀に見る、自分好みの作品が豊作な1年だったようにも思います。
先日、毎年恒例の、友人たちとのベスト10発表会をしてきたのですが、比較的見ている映画が被っている3人なのに3人ともあげた映画は2作だけだったというのも、その豊作ぶりの表れだったようにも思います。

というわけで今年の私のベスト10!

10位「君たちはどう生きるか


事前宣伝がほとんどないことで話題になっていたジブリ最新作。
小学生の頃「君たちはどう生きるか」で読書感想文を書いたことがあるな〜くらいの心構えで見に行ったのですが、冒頭から、宮崎駿ってこんな表現もするんだという衝撃があり、そのままのめり込んで見ました。
見終わった後も特にインタビューなどは読んでおらず、周辺情報は知らないままなのだけど、個人的には、宮崎駿の創作の原点というか、原体験として抱えてきたものを垣間見るような物語だったように感じた。

9位「フェイブルマンズ」


そしてこちらはスティーヴン・スピルバーグの原点映画。
スピルバーグがどのようにして映画を撮るようになったかという話なのだけど、天才の業というか視線の容赦なさというか、このように観察され、あばかれてしまう家族はどのような思いなんだろう……ということも気になった。それでも作るものは圧倒的なんですよね。
そういう意味で「作るべくして作る人」の映画という意味で「君たちはどう生きるか」とも通じるように感じました。

8位「ウーマントーキング」


メノナイトというキリスト教系一派の集落で起こった実際の事件をもとにした映画。
事件は非常に陰鬱なものなのだけど、映画は事件自体を描くのではなく、教育を奪われて生活してきた女性たちが事件への対応について話し合い、少しでも良い方向に進むための一歩を踏み出す映画になっているのがいいなと思いました。
信仰を否定するのでもなく、善くあるための行動をを探っていく形なのも納得感がある。
なにより、「教育」の希望を改めて感じる映画で、自分も大きくわければ教育系の仕事をしているので、折に触れて思い出すことの多い映画になった。

7位「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」


正直、映画として歪に感じる部分もあるんだけど、いろんなハードルを越えていった作品であること、そして、そういった態度が作品の「自分達が面白いと思えるものを作ろう」と突っ走っていく力強さにも現れていたような気がしてとても好きでした。
https://ichinics.hatenadiary.com/entry/2023/03/18/224725
この後、キーホイクァンは「ロキs2」にも出てましたね。そちらもとてもよかったです。

6位「ダンジョンズ&ドラゴンズ


まだ「レンタルビデオ店」でビデオを借りてくるという娯楽があった子ども時代、兄弟間で大人気で何度も繰り返し見た映画のひとつが「ジュマンジ」でした。
ダンジョンズ&ドラゴンズ」は初めてジュマンジを見た時の楽しさを思い出すというか、みたキッズがその後何年もにわたって擦り続けるであろうキリングパートがめちゃくちゃある映画だったなと思います。
と同時に昨年末から「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のゲームに誘っていただいて遊んだりもしていたので、自分が旅してる世界と地続きの空気感を感じられたのも嬉しかった。あの呪文こないだ覚えたけどこうやって使うんだとかね、そういう感じで。
ゲームやってる人も、やってない人も楽しめる、めちゃくちゃ強度のあるエンタメ作でした。

5位「エゴイスト」


見たのは2月なんだけど、その後折に触れて思い出す映画だった。
映画には主人公をとりまく恋愛や家族や友人など、いろんな関係がでてくるんだけど、そのそれぞれが言葉では語られない、広大な余白を背負っていて、でも実際に接する「人」ってそうなんだよなということを思った。
一人で歩く時に、とにかく顎をあげる、背筋を伸ばす、メイクをする。そういった主人公の姿を思い出すたびに少し泣きそうになる。浩輔のことは、どこで知り合ったのか忘れても、きっとずっと覚えている。
joshi-spa.jp


4位「首」


戦というもののくだらなさ、(この話を描く上で)キャストはほぼ男性だけでいいだろうという判断、そしてこのキャストを集めることができる監督の求心力、尊敬される存在でいるということの重み…みたいなことを考えた映画だった。めちゃくちゃ面白かったし、美しいところは美しい、醜悪でいて魅力的、というバランスもよかった。これまでいくつかの「信長」話にはまってきましたが、この信長は格別だったな。
あと監督の求心力という意味でまた野球のこと考えながら見てました…。

3位「エンパイア・オブ・ライト」


社会に余裕がなくなったときに取りこぼされてしまいがちな、困難を抱えて生きる人や困難の渦中にある人が社会の中でどう救われるかということについて色々考えた映画だった。
個人的には、恋愛関係じゃなくても寄り添うことはできるし、フルコミットしなくても支えることはできる、取り残されているようでも、気にかけている人はいるという、希望の話だなと思いました。
そして終盤にでてくる「映画とは1秒間に24フレームの静止画の明滅によって暗闇を消し去るものだ」(大意)というセリフが、まさしく”映画”の寄り添い方を言い表す言葉に思えてとても印象に残った。

2位「ブルージャイアント」


ブルージャイアントは原作も読んでいて、その上での「よかった」なんですけど、とにかくあの原作を、1本の映画にするときにこういう世界線で描くのかっていうのが「映画化」にできることのような気がして感動しました。原作のSUPREMEから脚本を担当している人が映画の脚本もやっていて、「ピアノマン」というスピンオフ小説も出しているのでそれも読んだ。
正直演奏シーンの映像はもうちょっと…と思わなくもないけど音楽の方にお金をかけた判断は大正解だと思います。そうじゃなきゃブルージャイアントの映画化じゃないもんね。

ニュース!オモコロウォッチ!042「便でもクソでも世界一だと思って吹いてる」 | オモコロ

オモコロウォッチのブルージャイアント話も面白かったので((従来の特集テーマではないために)不評だったらしいですが笑)見た方はぜひ

1位「アフターサン」


一緒に暮らしてはいなかった父との旅行の記録を、当時撮った映像で、かつての父と同じ年になった娘が振り返っている……という構図の物語。
映画を観る前は、どちらかと言えば娘寄りの気持ちになるのかなと思っていた予想ははずれて、完全に父親であるカラム寄りの気持ちで見た。娘のいる父親になったことないのに、カラムの気持ちがわかる気がしてしまうのは、きっと自分も、おそらくカラムがそう感じているように、ちゃんとした大人になれてないとどこかで思っているからかもしれない。
音楽の使い方が自分の世代ど真ん中だったこと、自分もかつてビデオカメラを持ち歩いてた時代があること、などからもすごく親近感のわく映画だった。
happinet-phantom.com



以上です。

友人たちとのベスト10発表会やっていて思うのは、映画の感想を話し合うのって、同じ物語を通して「自分は」どこがぐっときたのかという話だから面白いんだよなということです。
今年のランキングでいえば「エンパイア・オブ・ライト」と「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」を全員が挙げていたのだけど、その共通作でもやっぱり、印象に残ってるポイントはそれぞれなんですよね。
なので、同じ映画を見た人の感想をたくさん読めたりする、このシーズンの色んな方の「まとめ」もかなり楽しみにしています。



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ichinics.hatenadiary.com