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2022年に読んだ本

自分がどのくらいのペースで本を読んでいるのか知りたくて、昨年はじめて読書系のアプリを使ってみた。 仕事で読んだ本や、資料として飛ばし読みをしたものは除いて、結果はまあまあ予想通りの月4冊/年48冊で、こうして冊数として把握できてしまうと、自分…

人質の朗読会

「人質の朗読会」という本を読んだ。 ある国で、日本人旅行客たちがツアーバスごと反政府兵士に誘拐される。やがて事件は悲劇的な結末を迎えるが、しばらくして、彼らが人質として監禁されている最中に語った物語が発見されて……というところから始まる短編集…

「死ぬまでに行きたい海」とカチューシャの記憶

岸本佐知子さんのエッセイ集「死ぬまでに行きたい海」を昨年末に読んだ。 自分も知っている場所の話がでてきくるのも楽しいし、行ったことのない場所も、気になっていた場所である率が高く(YRP野比や海芝浦など)、さらに田舎の思い出(丹波篠山)などは、…

『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』

この本を読むのは、なんだかすごく心地が良くて、少しずつ大切に読んだ。 発売してすぐに開催された、翻訳者である岸本佐知子さんと山崎まどかさんのトークショーにも行き、そこでルシア・ベルリンは、自分の体験をもとにした作品を多く書いた作家であるとい…

 「いまさら翼といわれても」/米澤穂信

6年5か月ぶりの〈古典部〉シリーズ新作。 そもそも私はアニメ「氷菓」がきっかけで米澤穂信さんの作品に興味を持ち、アニメを見終わってから氷菓の原作である〈古典部〉シリーズと、同じく高校生が主人公の〈小市民〉シリーズを読んで夢中になったので、つま…

 ハヅキさんのこと/川上弘美

ずっと前、吉祥寺のジュンク堂で柴田元幸さんの選書フェアをやっていて、そこに並んでいたのを見て買った短編集。 川上弘美さんの文章はとても好きなのだけど、読みたいタイミングに読みたい作家さんの一人で、つまり長らく積んでいて、先日ようやくしっくり…

火星の人/オデッセイ

映画「オデッセイ」の宣伝がはじまった頃、たぶんtwitterのTLでその原作が「火星の人/The Martian」というタイトルの小説であると知り、そのシンプルなタイトルと、どちらかといえば感動大作のような雰囲気に見えた映画の予告とのギャップが気になって、ま…

 何者/朝井リョウ

朝井リョウさんの作品は「武道館」を読んだことがあるだけだったのだけど*1、「何者」は特におすすめしてもらうことが多く、ちょうど文庫が出ていたので読みました。 そして読んですぐ、出てる本全部読もう、と思いました。そのくらいインパクトがあった。何…

 あなたを選んでくれるもの/ミランダ・ジュライ

あなたを選んでくれるもの (新潮クレスト・ブックス)作者: ミランダジュライ,Miranda July,岸本佐知子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/08/27メディア: 単行本この商品を含むブログ (19件) を見る「君とボクの虹色の世界」公開後、2作目の脚本執筆中にミ…

 この世にたやすい仕事はない

今の仕事をしていない自分のことを考える。 よく思い浮かべるのは、薄いグレーの制服を着て、非常階段で休憩しているとか、晴れの日は屋上で弁当を食べるとか、椅子がギイギイ音がすることが悩みだとか、そんな仕事内容とは関係のないこと。でも体育の授業で…

 「アズミ・ハルコは行方不明」/山内マリコ

アズミ・ハルコは行方不明作者: 山内マリコ出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2013/12/19メディア: 単行本この商品を含むブログ (19件) を見る一昨年読んだ『ここは退屈迎えにきて』(http://d.hatena.ne.jp/ichinics/20121011/p1)がもうずっと忘れないだろう…

 忘れられたワルツ/絲山秋子

忘れられたワルツ作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/04/26メディア: 単行本この商品を含むブログを見る毎日は続いているのに、何かが少しずつ決定的に違っている世界を描いたお話が多く、直接触れている作品はたぶん1作だけだけど、東日本…

 「AKB商法とは何だったのか」

ニーツオルグ*1のさやわかさんの本だから、というのはもちろんあるんだけど、それだけでなく、AKBを好きになってから自分の中にあったもやもやを、違う視点で見てみたいなと思って読みました。 この本はAKB商法を批判/肯定するための本ではないし、AKBに限…

 「色彩をもたない多崎つくると、彼の巡礼の年」/村上春樹

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年作者: 村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/04/12メディア: ハードカバー クリック: 3,074回この商品を含むブログ (342件) を見る今回の「多崎つくる」の物語は、羊3部作をはじめとする「僕」の物語と構…

 「夏への扉」/ロバート・A・ハインライン

いつか夏休みに読もう、と思って先送りにして何年も経ってしまった本。それだけに自分の頭の中に「こんな話かな」というイメージがかなり出来上がっていたのですが、いざ読み出してみると私の想像していたものとは全く違い(当たり前)、想像の何倍も面白か…

 ならずものがやってくる

タイトルがいいなと思ったのと、いつだったか美容院で渡された雑誌に載っていた書評を読んで気になって買った本。タイトルからついヤァ!ヤァ!ヤァ! とならず者が群れをなしてやってくる感じの話を想像していたのですが全然違いました。ならずものがやってく…

 「なんらかの事情」/岸本佐知子

なんらかの事情作者: 岸本佐知子出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 30回この商品を含むブログ (36件) を見るすっと気持ちよくイメージが腑に落ちるところからお話が始まり、やがてあらぬ方向に転がって、そこに…

 「残り全部バケーション」/伊坂幸太郎

なんといってもタイトルがいいよねと思います。残り全部バケーション。 残り全部バケーション、って感覚は、例えば以前テレビで解剖学の先生が話していた「人間がもし野生動物だったら30才くらいが寿命である、しかし人はただ生物としていきるのではないのだ…

 プシュケの涙

プシュケの涙 (メディアワークス文庫)作者: 柴村仁,也出版社/メーカー: アスキーメディアワークス発売日: 2010/02/25メディア: 文庫購入: 10人 クリック: 89回この商品を含むブログ (37件) を見る貸してもらって読みました。全3冊のシリーズで、1つの話、1…

 〈小市民〉シリーズ春夏秋/米澤穂信

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2004/12/18メディア: 文庫購入: 16人 クリック: 414回この商品を含むブログ (662件) を見るアニメ版の『氷菓』がとても面白かったという話をしていたらおすすめし…

 「ここは退屈迎えにきて」/山内マリコ

ここは退屈迎えに来て作者: 山内マリコ出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2012/08/24メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 100回この商品を含むブログ (68件) を見る“女の子”が主人公の、少しずつ繋がった連作短編集。どの話も、自分の身近にいる誰かや友だち…

 「そして夜は甦る」/原寮

そして夜は甦る (ハヤカワ文庫 JA (501))作者: 原りょう出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1995/04メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 31回この商品を含むブログ (66件) を見るおすすめしていただいて読みました。 原寮さんの小説は「私が殺した少女」を読ん…

 「ブルックリン・フォリーズ」/ポール・オースター

ひとりで余生を過ごそうとブルックリンに越してきた主人公、ネイサンと彼が偶然に再会した甥のトム、そして彼らを取り巻く人々の物語。 登場人物の過去と現在の“愚行”を散りばめながら、ネイサンの目を通した日々が細かに語られていく様子は、インターネット…

 「天地明察」/冲方丁

とっても面白かったです。とても簡潔な語り口ながら、読みながらなんどもぐっときて、涙ぐんで深呼吸したり、笑ったりした。読み終えて、ああ楽しかったなって満足感でいっぱいになりました。天地明察(上) (角川文庫)作者: 冲方丁出版社/メーカー: 角川書店(…

 「f植物園の巣穴」/梨木香歩

なんとなく、植物の多くでてくる本が読みたいと思い、それなら梨木香歩さんの本だろうと書店に行くと、タイミングよく文庫の新刊でこの「f植物園の巣穴」が並んでいて手にとった。 植物園に勤める主人公が、歯の痛みに耐えかねて風変わりな歯科医院を訪れる…

 「ミュージック・ブレス・ユー!!」/津村記久子

ミュージック・ブレス・ユー!! (角川文庫)作者: 津村 記久子出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2011/06/23メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 29回この商品を含むブログ (11件) を見る遠出をする用があった朝、思いついて改札…

 ドラゴン・タトゥーの女

監督:デヴィッド・フィンチャー 原作:スティーグ・ラーソン 映画公開前に原作を読み、とても気に入ったので風邪気味にもかかわらず公開日に見に行ってしまいました。面白かった。見終わってから158分もあったというのを知ったのですが、全然長いと感じなか…

 猿の一休み

「モンキービジネス」の最終号刊行イベントに行ってきました。 出演は、小野正嗣さん、岸本佐知子さん、川上弘美さん、小澤實さん、古川日出男さん、そして「モンキービジネス」の責任編集者である柴田元幸さんでした。 「モンキービジネス」は、たいへん惹…

 「どこから行っても遠い町」/川上弘美

どこから行っても遠い町作者: 川上弘美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/11メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 18回この商品を含むブログ (74件) を見るどこかにある町を舞台に描かれる連作短篇集。 健康診断の待ち時間に読みはじめたのだけど、1話終…

 絵本の中の記憶

最近、友だちの子どもに絵本をプレゼントするという機会がいくつかあったので、どんな本が良いかを考えながら、自分が子ども時代に読んだ絵本を読み返してみました。どれも本当に面白くて、ストーリーはだいたい覚えているのに、楽しくてつい夢中になって読…